*第二話中編*
一方その頃のチルドレンジャー達は、円陣を組む形で応戦していた。はっきり言って敵の数が多すぎて切りがない。しかも油断しているとデビルアーマーの一撃が飛んでくる。
「このままじゃ、決定打に欠けるな。」
「どうしよう〜。」
「よし、こんな時こそ新しい機能の出番だぜ!」
「でも使い方判らないじゃない。」
「しまったー!?」
「レッド、煩いですよ。」
「とりあえず、落ち着けよ。」
「お、おう・・・。生麦生米生卵生麦生米生卵・・・・・・。」
【何故早口言葉?】
レッドは精神統一を図る為か、何やらブツブツ呟きだした。しかし内容が内容なのでちょっと離れたくなる仲間達。するとグリーンはレッドの体がうっすらと光を放っていることに気がついた。
(何、あれ?)
「・・・生麦生米生卵!よし、言えた。さて、やるぞ〜。テメーら覚悟しやがれ!!」
そう言ってレッドは敵に対して指差した。グリーンは変な予感がしたので、後方へその瞬間駆け出した。間髪入れず、上空(屋根はすでに破壊されている)が輝きを発した。そして、生卵が雨霰の様に降ってきたのだ。
『うぎゃあああああああああああ!?』
ブラック・サンダー及び町役場の職員絶叫。因みに町長外一部は有効範囲外だったため無事である。
「生卵、ですね。」
戦闘員の体を盾にして生卵から身を守っているのはブラック。盾にされたほうは卵の直撃を受けて堪ったものではない。
「何で卵が降ってくるの?」
「いや、俺に聞かれても・・・。」
敵を身代わりにしてさっさと卵の嵐から脱出したピンクとブルー。殻と白身と黄身でグチャグチャになった町役場を眺め次郎は思った。
(掃除、大変そうだな・・・。)
さて、話は町長と女の交渉に戻り、生卵の降り注ぐ光景に目を奪われた女の隙を見て町長は逃げようとした。
「甘い!」
女は声とともに自らの腕を振り上げる。すると、手にした鞭が弧を描き町長に襲い掛かった。どうやら女は鞭の使い手のようである。しかも元々腰が引けていたせいか、町長の動きは敏捷性に欠けていた。
「この私から逃げようなんていい度胸じゃない。どうやら、あんたには御仕置が必要のようね。」
「ぎゃあ!?」
女は町長に近づくとヒールで手の甲をグリグリ踏みつけた。
「可哀想にねえ、あんたの奥さんと子供も・・・カオリちゃんだっけ?父親が素直じゃないばっかりにね。ひょっとしたらこの町に住めなくなるかもねえ・・・。」
「な、何故娘のことを・・・!?」
「さあね。」
女は至極愉悦を感じているようであった。悪趣味である。
「ミラーの悪い癖が出たな。」
「全くあの女は・・・。」
ブラック・サンダーの幹部と思しき戦闘員達とはデザインの違う仮面の人々が嘆息した。
「総帥、どうしなさいますか。」
「放っておけ。それよりも先にチルドレンジャーを何とかせんとな。」
「は!」
ジャックとジョーカーが視線を向けると丁度戦闘員の一人がダチョウの卵と思われる物体の直撃を受けて倒れたところであった。そして、それと同時に卵の雨は止んだようでもある。
「レッドー、大丈夫ー?」
卵を踏むのが嫌なのか、離れたところから声をかけるグリーン。
「・・・うわ!何これ!?きったねー!!」
レッドが気がつくと彼の目の前には割れた卵でできた池が大げさに言うと広がっていた。
「心当たり無いわけ!?」
「ねーよ!」
グリーンの言葉に答えるレッド。
「じゃあ、何故さっき早口言葉なんて唱えてたんですか?」
今度はブラックが戦闘員を踏み台にしつつ尋ねる。
「え〜、だってさ、静音のおっさんが、気持ちを落ち着かせるには早口言葉が良いって・・・。」
(やっぱり・・・。)
(アイツのせいかよ・・・。)
(それを言うなら『人』の字を飲み込むんじゃ・・・?)
(というか、騙されてるって絶対・・・。)
他のチルドレンジャーメンバーの心の声である。なんとなく気まずい沈黙が場を支配しかけたその時だった。
ピーピーピーピー・・・
アラームのような音と共にブルー変身リングの真ん中のボタンが点滅している。レッドを除く他のメンバーも彼の元へ集った。因みにレッドは卵をどう避けようか悩んでいた。
「一体何?」
「何なのそれ?」
「どういうことですか?」
「さあ?とりあえず、押してみるか・・・。」
ピッ
ブルーが試しに点滅しているボタンを押してみた。
『・・・あー、こちら天才雪代静音だ。聞こえるかな、ブルー君。』
ピッ ブチッ ツーツーツー・・・
「お、おい、ブラック!?」
聞こえてきた音声に即座にブラックは同じボタンを押した。とたんに電話を切ったように音が途切れる。
「すみません、今無性に回線を切断したくなりました。」
「ちょっと〜。」
ブラックの発言に流石に文句を言いたくなるグリーン。せっかく静音と交信出来るのならいろいろ聞いておきたいこともあったのだ。
ピーピーピーピー・・・
再度呼び出し音。
「はい、こちらチルドレンジャーブルー。」
『・・・静音だ。いきなり切るのは止めてくれないかな。礼儀がなってないと思わないかね?』
「切ったのはブラックだぞ。」
『おのれあのクソガキ・・・。』
「何か言いましたか?用件は簡潔にお願いします。」
『ブラック君・・・。まあ、いい。ともかく、どうやら見た所、君達は困っているようだね。』
「見た所・・・?」
「というか、何で知ってるのよ。」
『まあ、それは僕が天才だからということにでもしておこうかな。』
ピッ ブチッ ツーツーツー・・・
「グリーン!?」
「あ、ごめん、つい・・・。」
ピーピーピーピー・・・
「はい、こちらブルー。」
『・・・いい加減にしてくれないか。今度メンテナンス時にオートでこちらから通信可能にするぞ。』
「御託はいいから本題早く。そろそろ奴等が卵の(精神的)ダメージから回復してきそうだし。」
『グリーン君・・・。一応ページの都合があるからここでの言い合いは避けるとして、君達に戦闘スーツの新しい機能の説明をしてやろう。魂の底から感謝するように。』
「嫌で・・・ムグ!?」
「しー!ここで揉めると面倒だから静かにしてくれ・・・。」
何か言いかけたブラックの口を塞ぎ小声で耳打ちするブルー。どうもブラックは冷静なようで変な所が正直だ。しかも何気に毒舌なので始末に悪い。ブルーはこれからの人間関係を思い気が重くなりそうだった。
『では、まずブルー君のリングの横にある銀のボタンを押してみたまえ。』
「横・・・?あ、本当だ。」
「目立たないけど確かにあるね。」
「何でわざわざこんな所に・・・。」
「知りませんよ、そんなこと。」
とりあえずブルーが言われた通りにボタンを押すと、鈍い振動音とともに板状の映像が浮かび上がった。
『!?』
驚きに息を呑む四人。
「こ、これは一体・・・。」
「ホログラフィー・・・?」
「すごぉおおい!」
「・・・。」
『はっはっは、素晴らしいだろう。さあ、心の底から褒め称えたまえ。』
「あ、ここを動かすと画面がスクロールされるみたいね。」
「多分ここが決定キーだな。」
「あれ?このマーク何だろう・・・。」
『聞けよ、コラ・・・。』
一方その頃チルドレンジャーに無視される形となったブラック・サンダー及び役場職員一同は、リアクションに困っているのかすっかり固まっていた。そんな中次郎は勇気を出して立ち上がる。
「むっ、貴様何をしておる!?」
ジョーカーが声を掛けると、次郎は疲れたように言った。
「何って・・・掃除。バケツとモップ持って来ようと思って。」
『・・・・・・。』
「そうね、田中君の言う通りだわ。」
女性職員が一人立ち上がる。
「確かに、このまま放置しててもなぁ・・・。」
そしてまた一人・・・。
「やりますか、掃除!」
「お、おい、コラ、勝手な真似は・・・。」
「じゃあ、あんた達がやってくれる訳?」
「・・・。」
「ほら、邪魔だから隅にでも行っててちょうだい。」
「どうせ暇ならいっそ手伝いなさいよ。」
「はい、すみません・・・。」
掃除の鬼と化した女性職員に迫力負けしている悪の組織であった。こうして町役場の掃除は始まったのである。
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