世界は、絶望に包まれていた。
人々は皆うめき声をあげ、力無き者から倒れていく。
道のあちこちには屍が積まれ、何とも言い難い臭いを放っていた。
(※酔いつぶれているだけです)
「…ひどい…」
「ああ…ここまでとはな…」
死屍累々(ししるいるい)。
そんな地獄絵図の中、二人は歩いていく。
「少しでも早くなんとかしなくちゃ…!ただでさえキミのせいで、時間をムダにしちゃったワケだし」
「そのセリフ、そっくりそのままお前に返すぜ」
二人の間に、緊迫した空気が流れる。
あまりにも早い決別の気配。
「…キミのせいだね。いきなりダークバインドなんて唱えてさ…ヘンタイ」
「…お前のせいだな。人の頭にモノぶつけといて謝りもしねえし…ガキ」
「それはキミが謝る前に攻撃してきたからじゃないか!このストーカー!!」
「それはお前が笑ってごまかそうとしてたからだろうが!このちんくしゃ!!」
「むっか〜!ちんくしゃっていったなー!!」
「お前こそストーカーって誰のことだ、あ゛あ゛っ!?」
しばしの沈黙。
完全にウィッチのことは忘れ去っている。
「…どうやら、キミとは分かり合えない運命のようだね…」
アルルは、シェゾから一歩距離をとる。
「ああ…戦う定めのもと、俺達は存在してるんだろうな…」
シェゾもまた、闇の剣を鞘から引き抜く。
「先手必勝!ばよえ〜ん!!」
「誰が感動なんぞするか!せあっ!!」
シェゾはばよえ〜んの効果範囲を力ずくで脱出し、そのままアルルへと突き進む。
「闇の剣よ!」
「げげげっ!ファイヤー!!」
「斬り裂けーーっっ!!!」
バシュ!!
アルルを斬り付けるはずだった剣は、苦しまぎれに放たれたファイヤーを斬り裂くにとどまった。
しかしシェゾの勢いは止まらない!
「うわわっ!魔導師の接近戦はんたーい!!」
かろうじてシェゾの剣をかいくぐるアルル。
「ふざけた事を…エクスプロージョン!!」
「リバイア!くうっ、ホーリーレーザー!!」
「メガレイブ!!」
「ほう、やるな…だがそんなもんで俺を倒せると思うな!ダイヤモンドダスト!!」
「なんのっ!ヘブンレイ!!」
「メガレイブ!!」
「ぐおっ!イクリプス!!」
「かかったね!ダイアキュート!ダダイアキュート!!」
「くっ!?しまった!!」
「メガレイブ!!」
「…おい」
「なに、命ごい?」
「いや、気になってたんだが…さっきから変なの混じってないか?」
「変なのはキミだろ…でも、そういえば…」
「メガレイブ!!!」
『コイツかーーーっっっ!!!』
どご〜ん
突如(?)放たれたメガレイブにより、アルルとシェゾの戦闘は一時中断される。
「シェーゾーーー!!!」
「ちょ、ラグナス!?キミ一体どういうつもり!?!」
「やんのかコラ!!」
しかし、ラグナスの様子がおかしい。
いやいきなりメガレイブぶちかます時点でおかしいのはわかっていたが。
「…ひどいよ…」
「ラグナース、もしもーし?」
「…嫌な予感がするな…」
「俺はシェゾのこと、こんなに愛しているのに…」
「おいアルル、行くぞ!とにかくコイツから離れるぞ!!」
「うん!行こう!!」
「お前はアルルと楽しくデートかぁーーーっっっ!!!」
『誰がデートかぁーーーっっっ!!!』
ツッコミによって、絶好の逃げ出すチャンスをのがした二人。
「うわあああん!こうなったら奪い取ってやる!ビバ略奪愛メガレイブ!!」
「ちょっと!ボクを巻き込まないでよ!!リリリバイア!!」
「気色悪いこと言うなアレイアード!!」
「あ、アルルがリバイアを…やっぱりシェゾ取られたくないんだあああ!!!」
「イミわかんないから!ボク身を守っただけだから!聞いてよ!!」
「無駄だ…ヤツは、完全に酔っている…」
「…あ。」
アルルはすっかり失念していたが、今も降り続く雨は、魔導酒。
「じゃあ…」
「ああ…つぶすしかない」
そのときシェゾの瞳からは、殺意しか読みとれなかったという…。
「くそおお内緒話か!?内緒話なんだな!?!うらやましすぎるぅぅ!!」
「やるしかないんだね…ダイアキュートダダイアキュートダダダイアキュート!!!」
「はあああああああ…」
「いくぞ!愛のドラゴニック・バスター!!!」
「元の世界に帰れ!アレイアード・スペシャル!!!」
「ちょっと寝てて!じゅじゅじゅじゅげむ!!!」
その輝きは、はるか星の彼方からも見えたという…。
「終わった…」
「うん、終わったね…」
一面の荒野。
確かついさっきまでは街道だったような気もするが、
この世界ではよくあることだろう。
「ラグナス…キミのことは、忘れない…」
「俺は今すぐ忘れたいが」
そう言ってシェゾはやれやれと腰を下ろす。
荒野にぽつりと不自然に置かれた黒い何かの上に。
「新たな犠牲者を出さないためにも…急ごう。諸悪の根源の元に!」
「ああ。それまでは休戦だ!」
ガシッ
かたく手を握り合う二人。
名実共に、最凶タッグが結成された瞬間だった。
「メガレイブは愛のささやき☆」異世界の勇者ラグナス、撃破――!