二人の前に立ちふさがる刺客達…。
ある者は幻惑の舞で二人を翻弄しようとし、またある者は歌声で惑わせようとした。
美しさをもって魅了しようとする者、哀願にて引きとめようとする者…
けれど二人は止まらない。
刺客達の思いすら受け止めて、ただ、前へ―――。
(※全員単なる酔っぱらいです)
「おい」
”アルルvsドラコ ガチンコ美少女対決(シェゾ棄権)”
戦い終え、見事栄光を手にしたアルルにシェゾが呼びかける。
「なに、シェゾ?」
「お前、何も考えずに突き進んでいるように見えるが…アテはあるんだろうな?」
「まあね。…ボクの知り合いでこんなバカできるのは一人しかいないし」
「その意見には激しく同意だ」
「でしょ?違ってても何かは知ってるだろうし、行くだけ行ってみようかなって。まあ間違いないとは思うんだけど」
「確かにな…黄金りんご100個賭けてもいい」
「じゃあボクは200個〜」
「じゃあ俺は魔導水晶もつけるぜ」
「じゃあボクは…」
「止まりなさい!」
アルルとシェゾの貴重な和やかトーク(微妙に競り合い)は、突然かけられた制止の声によって断ち切られた。
雨にも負けることのない、その凛とした響き。
ただならぬ決意をみなぎらせ、二人の前に立ちはだかる人物。それは…
「…ルルー…」
アルルが、悲痛な声でその名を呼ぶ。
「覚悟はしていたが、な」
シェゾの声も、どこか苦々しい。
「ああ〜らアンタたち、いつの間にそんな仲良くなったのかしら?」
しかしルルーは、そんなアルル達の感傷を振り払うかのように、挑発的な姿勢を崩さない。
アルルは、そんなルルーの態度に、怒るどころか痛々しさを感じる。
「ルルー、もうやめようよ…」
シェゾもまた、普段の怒りっぽさなど嘘のように言葉をつむぐ。
「俺たちの仲違いを狙っても無駄だぜ…そんな次元は、とっくに越えてるんだ」
その言葉に、ルルーは表情を消す。
「…そう…。もう、戻れないのね?」
「…ごめん、ルルー」
「どけと言っても…どかねぇんだろうな?」
それが、合図。
「この先には、進ませない!」
「ボクも…ゆずれないんだ!」
「力ずくで行かせてもらうぜ!」
悲しい戦いが、幕を開けた。
「破岩掌!!」
「リバイア!!」
ルルーの繰り出した攻撃はアルルの障壁にはばまれ、そのスキにシェゾが攻撃を仕掛ける!
「フレイムス「だめーーーーーっっっ!!!」
ばぼん。
魔導暴発。
シェゾ、黒コゲ。
「何すんじゃこのガキャァアア!?!」
「攻撃魔導は使っちゃダメ!!」
本気でキレるシェゾ。
休戦協定破棄か!?と思われたところに、アルルの真剣な瞳とぶつかる。
「ああ!?お前何甘っちょろいこと抜かしてんだ!?!」
「ダメったらダメ!」
「手を抜いて、倒せる相手だと思ってんのか!?」
「でもっ、ここで攻撃したら、後で何を言われるか!!」
「うっ!!」
シェゾは硬直し、押し黙る。
何かよほど嫌な過去があるようだ。
「だからここはね…」
ごにょごにょごにょ……
「何を二人でごちゃごちゃやってるの!?レイスカッター!!」
「なるほどな…そいつは楽だ!」
「でしょ!?それじゃいっくよ〜」
『リバイア!!』
********
「…ルルー…」
「…もう、やめとけ」
「ぐっ…まだ、まだよ!!」
ルルーはすでに、気力のみで立ち上がっている状態であった。
「ルルー!」
「…クソッ」
「はああああああ…」
力を溜め込むルルー。
想像を絶する死闘であった。
戦闘再開の後、アルルとシェゾは…
ただよけ続ける作戦に出た。
今ルルーがふらふらなのは、激しい運動によって酒が回った結果であって、
要するに自滅である。
いくらルルーが”ざる”とはいえ、ドーピング済みの”わく”二人には敵わなかったのだ…。
てゆーか、人をおちょくるにもほどがある。
「チッ。おい、スリープかけるぞ」
「待って、シェゾ…」
静かな、アルルの声。
「…ルルー。キミは…一つだけ、大きなミスをおかした」
「っな…何を…」
普段とは違った様子のアルルに、動揺を見せるルルー。
「キミは…この先へは、進ませないって言ったよね?」
「だ、だから何よ」
「…実はボク達、まだ犯人分かってなかったんだ」
その、言葉に…
「…あ…」
「そう。キミがボク達に、犯人を教えてくれたんだよ!!」
ガーン!!!
「そん…な…」
ガクリ
ルルーは崩れ落ちる。
気力を打ち砕かれた彼女に、もはや立ち上がるだけの力は残されていなかった…。
「…せめて、いい夢を…スリープ!」
抵抗することもできず、ルルーは、夢の世界へとおちて行く。
「…は。たいした女だぜ」
戦士を讃えるかのように、シェゾは自らのマントを外し、ルルーの上へと投げ落とす。
「…めずらしいね。キミがそんなことするなんてさ」
「フン、勘違いするな。コイツが起きたとき、そのまま放っておくとやっかいなことになるからだ」
「ふ〜ん?ま、そういうことにしといてあげるよ!」
「…チッ、余計な事しゃべってねえで、さっさと行くぞ!」
「はいはい、犯人も確定したことだしね!」
「…チッ!」
降り続く雨の中。二人のまわりだけ、なぜか明るく見えるようだった。
「うう〜ん、さたんさま〜ん…むにゃむにゃ…」
「一途な気持ちを破岩掌にのせて☆」恋する格闘女王ルルー、撃破――!