そんなこんなで戦闘が始まり数時間。アルル(とカーバンクル)とウィッチとBキキーモラが力を溜め、最後の大一番を勝利するための大技を放とうとした時だった。
「おい、いるのかDシェゾ。」
「あ、オリジナル。」
『シェゾ!?』
真打、もといこれまでの戦いの景品(?)とも言うべき存在が姿を現したのだ。女性陣の注意がそれる中、カーバンクルビームが発射。それに伴い雪崩式にアルル・ウィッチ・Bキキーモラの技が暴発。
『リバイア。』
『キャアアアアアアア!?』
「グー!?」
大爆発の中でも冷静にリバイアを張る男二人と、悲鳴をあげて爆発に巻き込まれる女性三人と一匹。光が収束し、煙が晴れたあとにはプスプスとすっかり焦げた三人と一匹が転がっていた。
「何だったんだ・・・?」
始めから見ていたDシェゾと違い最後に来たシェゾは事情がさっぱりわからない。
「気にするなオリジナル。これはそういう話だ。」
「はあ・・・?」
Dシェゾがシェゾの肩をポンと叩く。確かにこの話はギャグだから今まで倒れた人もお星様になった人も明日には復活していることだろう。問題ない。
「そんなことより、オリジナル。我は腹が減ったぞ。今日は我も手伝ってやるから早く飯にしよう。」
「・・・まあ、いいだろう。」
Dシェゾに促され、そのまま家に戻っていくシェゾ。たっぷり十時間睡眠をとったシェゾは朝の不機嫌さとは打って変わって素直であった。因みに家の外で倒れている三人(と一匹)は、Dシェゾとてのりぞうが手配して、BキキーモラはキキーモラにウィッチはウィッシュにそしてアルルとカーバンクルはDアルルに連絡を取り引き取ってもらったとのことである。そしてこのまま何も無く一日が終わると思いきやそうは問屋が卸さなかった。粗方食事の支度ができたと言うときに、てのりぞうから来客が告げられる。鍋の火を止めて、シェゾと何となく後をついてきたDシェゾが玄関の扉を開けると、二人の男がいた。一人は緑の長髪に金の角、言わずと知れたサタンである。全く何度ぶっ飛ばされても復活してくるあたりゴキブリ並みのしぶとさだ。因みに衣装はサンバではない。普通のローブだ。そしてもう一人は銀色の長髪の持ち主だ。銀髪男の顔を見た瞬間、シェゾの表情が凍りつく。サタンは咳払いをし隣の男を手で示すとこうのたもうた。
「今日は貴様の誕生日祝いに、あの世からルーンロードを召喚してみたぞ。」
「アホかぁああああああ!?」
シェゾがサタンに即ツッコミを入れる。同時にサタンに対し殴る蹴る刺す切り刻むの暴行の限りを尽くした。その手口の素晴らしさに感心するものが二人。
「さすが我のオリジナル。」
「さすが私の後継者ですね。」
Dシェゾとルーンロードである。シェゾとはいろいろあった二人であるが、彼らは結構シェゾのことを気に入っているのだ。
「今すぐ送り返せ!」
ボコボコの血まみれになったサタンの胸倉を掴み怒鳴りつけるシェゾ。
「まあまあ、シェゾ・ウィグィィ。せっかく貴方の誕生日なのですから、そうカリカリしなくてもいいでしょう。」
「貴様が言うな!」
ルーンロードが口先だけで宥めようとするが、シェゾにとっては逆効果であった。
「どうやら気に入らんようだな・・・。」
「当たり前じゃ!ボケ!!」
怒りのあまりまたもや言葉遣いがおかしくなるシェゾ。
「貴様は俺の誕生日なんぞ祝う気はないんだろうが!イベントにかこつけて嫌がらせしたいと言うのが本音だろ!?」
「いや、祝う気はあるぞ?一応。」
「信じられるか!」
サタンの胸倉を掴んだままガクガクと揺さぶるシェゾ。所謂脳みそシェイク状態である。
「ま、待て・・・ちと落ち着・・・け。それ以上は・・・止め・・・ちょっと本気でマズ・・・・・・。」
「オリジナル、サタンの首が絞まっているぞ。」
Dシェゾが指摘する。自業自得とは言え凄まじい惨状だ。結局シェゾが手を離したのはサタンが白目を剥いて口から変なエクトプラズムっぽい物質を垂れ流し始めてからだった。その間、Dシェゾは暇だったのでルーンロードと世間話をしていた。そこで聞き出したことには、ルーンロードはサタンに一時的に召喚されて、現在は仮の肉体が与えられているという。そのせいでいろいろと行動が制限されているらしい。例を挙げるとほとんど魔導が使えないというものもある。
「ところでサタンは何のために貴様を呼び出したのだ。どうもオリジナルは貴様のことが嫌いらしいぞ。会って喜ぶ類の存在ではないようだ。」
「そうかもしれませんねえ。これでも私は結構彼のことを気に入っているのですが・・・。」
Dシェゾの言葉を受け、そう述べるルーンロード。まあ、この過去の亡霊のせいでシェゾは闇の魔導師などという茨道に踏み込むことになったのだから、好きになるのは難しいだろう。でもそのおかげでアルルと出会い、各種ゲームその他に出番を得ることになったのであったりする。シェゾファンにはありがたい話だ。
しばらくしてシェゾがサタンの体を投げ捨てた後、Dシェゾはルーンロードから聞いた話をシェゾに伝えた。
「それで、オリジナルは何故サタンがこの者を呼び出したかわかるか?」
「そんなもの俺が知る・・・待てよ、今
「ああ、そう聞いた。」
「・・・闇の剣よ、切り刻め。」
「ぎゃああああああ!?」
切り裂くではなく切り刻む。ルーンロードは悲鳴を上げた。
「い、いきなり何をするんですかシェゾ!?」
「今の、痛かったのか?」
「・・・残念ながらそうです。仮の肉体だというのに、魔王がご丁寧にも痛覚や尿意まで正確に再現したのでね。」
ルーンロードが渋々答える。相変わらずサタンは魔力の無駄使いをしているようだ。
「そうか、そういうことか・・・。」
「オリジナル・・・?」
ルーンロードの答えにシェゾか壮絶且つ凶悪な笑みを浮かべた。
「ならば今すぐ生き地獄を味あわせてくれる!サンダーストーム!!」
「シェゾ!?」
いきなり攻撃を仕掛けるシェゾ。
「エクスプロージョン!」
ボカーン
「ダイヤモンドダスト!」
コカキーン
「アレイアード!」
ドーン
闇の剣を片手にえげつないまでに凶悪な魔導を放ちまくるシェゾ。どうやらかなりキているようだ。むしろ殺る気満々である。実際ルーンロードは弄り殺しな勢いだ。
「おお、どうやら派手にやっているようだな。」
「起きたのか、サタン。」
傍観していたDシェゾの横にいつに間にか復活したサタンがいた。本当にこの魔王しつこいな。
「どういうことだ。」
「気になるのか、時空の水晶よ。」
「今日はオリジナルの誕生日なのだろう?」
「そうだが・・・それがどうかしたのか。」
「理由次第で手を貸すか放置するか決めようと思ってな。」
「ふむ・・・。」
サタンが顎の手を当ててしばらく考え込む仕草をする。
「以前あいつと一緒に酒を飲んだ時にな。」
「ほう。」
「もし闇の魔導師になると知っていたらもっと精一杯先代をボコボコにしてやったと言っていたのでな。その機会を与えてやろうかと思ったのだ。」
「それだけが理由か?」
「まあ、私もルーンロードの奴にはいろいろと煮え湯を飲まされたことがあってな。秘蔵のカーバンクルちゃんコレクションを燃やされたときは光の勇者が来る前にこの私が滅ぼしてやろうかと思ったぞ。」
そんな理由かい!?
「楽しそうだな、オリジナル。」
「そうだな。」
サタンとDシェゾの間でのん気な会話が展開されていた。
「ふはははははは!ブラスト!ブリザード!シャドウエッジ!フレイムストーム!」
「お、おおお落ち着きなさい!シェゾ・ウィグィィ!?」
高笑いを浮かべて魔導を連発するシェゾ。そして逃げ回るルーンロード。
「アレイアード・スペシャルー!」
一際大きな爆音が周囲の空気を揺らした。土煙が晴れるとそこには倒れ伏したルーンロードを足蹴にするシェゾの姿があった。流石の先代闇の魔導師も魔導がほとんど使えない状態でシェゾの相手をすることは不可能だったらしい。
「ダークバインド。」
さらにルーンロードを拘束するシェゾ。今度は何をする気なのか。
「さあ、ルーンロード。選ばせてやろう。どの拷問がいい。」
『拷問!?』
その場にいたシェゾ以外の三人が異口同音に聞き返す。
「オーソドックスに車輪刑か?」
「車輪刑は種類が意外と多いから一つに絞りにくいぞ、オリジナル。」
Dシェゾが律儀にツッコミを入れた。しかも拷問兼処刑法になっている。
「では正座した大腿部の上に重石を乗せるというのはどうだ?十トンくらい。」
シェゾさん、それって日本伝統の拷問法ですか・・・?
「いや、十トンだと普通に潰れるだろう。」
今度はサタンが指摘した。
「因みに俺のお薦めは山羊責めだ。」
「な、何ですかそれは・・・。」
恐る恐る尋ねるルーンロード。
「そうかそうか、山羊責めがいいのか。待っていろ、今すぐ用意を・・・。」
「ちょ、ちょっと待ってください!だから山羊責めって・・・!?」
ルーンロードの疑問には答えずいそいそと仕度を始めるシェゾ。心なしかウキウキしている気がしないでもない。
「我が説明してやろう。」
そんな中で親切(?)にもDシェゾが名乗り出た。
「山羊責めとはその名の通り羊に足を舐めさせる刑だ。まず、受刑者の足を塩水に漬けたり、もしくは塩を擦り込んだりと、とにかく塩塗れにする。それを山羊のいる所に放り込むのだ。山羊には塩を舐めるという習性があるからな。しかも山羊の舌はやすりのようになっているから、相当なものだろう。一説によれば、骨が削り取られるまで山羊はひたすら足を舐め続けるという。」(ちょっと生々しい表現なのでグロくても平気な人だけ反転してください)
「じょ、冗談・・・ですよね。」
Dシェゾの説明に顔を引き攣らせるルーンロード。
「オリジナルの本棚にあった『拷問全書』にはそのように記述してあったぞ。」
そして追い討ちをかけるような一言に表情が凍りついた。
「さ、サタン!今すぐ私を送り返してください!!」
「はっはっは、そう慌てるなルーンロード。どうせ仮の肉体だ、遠慮はしなくていい。」
ルーンロードの抗議をサラリと流すサタン。というかあのシェゾの様子ではもしルーンロードを逃がしたら自分が山羊責めにされかねない。
「オリジナル、準備はできたのか?」
「ああ。」
「せいぜい楽しんでこい、ルーンロード。」
「嫌ぁあああああああああああ!!?」
ルーンロードの絶叫が響く中、とりあえず山羊はメーメー鳴いていた。
<後書き>
どうも、水無月はシェゾを苦労人(?)にする傾向があるようなので、たまにはシェゾにとって平穏な話でも書こうかと。何せ、シェゾの誕生日記念に書き始めた話だし。でも、やっぱりトラブルまみれですね。コンセプトはシェゾ総受。いや、別に深い意味はなく、皆から何だかんだで愛されているって話です(そうか?)
それにしても初書きキャラが多くて口調とかよく分からないです。技の効能とか結構いい加減です。そして予想外にアルルが黒い!黒いぞ!?アルルの腹黒は対シェゾもしくはサタン限定のはずでは?嫉妬って怖いですねえ・・・。ラグナスも何か変だ。そしてDシェゾが大活躍。むしろアルルと二枚看板でいけます。
とりあえず、シェゾさん誕生日おめでとうございます。
2005/03/16執筆開始〜03/22完成 03/23UP
*ここまでスクロールしてくれた奇特な貴方に感謝の気持ちを込めて・・・
<オチ?>