マジェスティック12について(デルタグリーン概説補遺)

竹岡 啓


お断り

 以下の文章はTRPG『デルタグリーン』の設定を要約したものであり、まったくのフィクションです。「デルタグリーン概説」も併せてお読みいただければ幸いです。


 1947年6月24日にエイリアンの宇宙船がニューメキシコ州のロズウェルに墜落したことを受け、事件の真相解明と隠蔽を目的とするマジェス ティック12がトルーマン大統領の命令によって同年の9月24日に誕生した。マジェスティックは国家安全保障会議に直属するということになっているが、こ れは形式的なものに過ぎない。自らの存在と活動を極秘の状態に保つことにマジェスティックは細心の注意を払っており、マジェスティックの一員だったジェイ ムズ=フォレスタル国防長官は口封じのため1949年5月22日に暗殺された。

 ロズウェル事件で回収された宇宙船の残骸とその乗組員について研究が進められたが、それは多大な犠牲を伴うものであり、多くの優秀な研究者が事故 死したり発狂したりした。宇宙船の反重力エンジンを起動させようとする試みは1972年にとうとう成功したが、しばらく操作しているうちにエンジンは爆発 を起こし、宇宙船は粉々に吹き飛んだ。宇宙船には4人のエイリアンが搭乗しており、そのうち3人は墜落の時に死亡したが、1人は生きて捕獲された。彼は種 々の検査を受けたが、やがて一種の冬眠状態になり、1980年の会見で同胞のもとに帰還するまで目覚めなかった。

 ケネディ大統領はマジェスティックに好意的だったが、ジョンソン以降の大統領には組織の存在が知らされなかった。しかし1980年10月31日に エリア51でマジェスティックの代表とエイリアンの会見が行われ、この会見の内容はレーガン大統領に奏上された。グレイと呼ばれるエイリアンと米国政府の 間で条約が締結され、市民の拉致を含む種々の活動をグレイは米国内で自由に行えることになった。その見返りとして、グレイは世界各国の軍事力の詳細な分析 結果を米国に提供し、これが冷戦における米国の勝利を決定的なものにした。米国市民の拉致は殺傷を伴うものであってはならないという当初の条件は頻繁に無 視されたが、新世界秩序建設の野望に燃えるレーガン政権はグレイとの友好関係を維持し、ブッシュ(父)もレーガンの路線を継承した。ただしクリントンには マジェスティックの存在は知らされなかった。ブッシュ(子)については不明である。

 マジェスティックの中心となるのはマジェスティック運営委員会であり、この委員会は軍・情報部・学界の主導的な人物12名で構成されている。この メンバーの中に大統領は含まれていない。マジェスティックにはMJ-1からMJ-12まで12の重要な部門が存在し、12名の運営委員が各部門をそれぞれ 率いている。グレイのことを信頼している運営委員は稀であり、グレイとの友好関係を維持すべきかどうかを巡って運営委員会は分裂している。マジェスティッ クの12の部門と運営委員の顔ぶれは以下の通りである。


MJ-1 Project AQUARIUS

 地球外生命体に関して米国政府が持つ利害の一切を統括し、マジェスティックの他の部門に予算を提供する。ジャスティン=クロフトに率いられる。ク ロフトはマジェスティック運営委員会の委員長でもあり、私的な利益のためにグレイとの同盟関係の継続を主張している。彼は大企業の所有者であり、グレイか ら提供された科学・技術を自分の会社のために利用している。また、グレイの技術によって己の寿命を延ばす研究を秘密裏に行っている。

MJ-2 Project PLATO

 マジェスティックの戦略企画部門で、アブナー=リングウッド博士に率いられる。完全な厭世家であるリングウッドはグレイを崇拝しており、グレイと の同盟を熱烈に支持している。真相が明らかになったところで、彼が態度を変えることはないだろう。実はミ=ゴに思念を操作されているのである。

MJ-3 Project GARNET

 マジェスティックおよびグレイに関する情報の管理を担当し、マジェスティックの存在が公にならないように様々な対策を講じる。洗脳や暗殺といった 手段が執られることもあり、それらの仕事を遂行するのはNROデルタ(国家偵察局デルタ部隊)の役目である。 ガーネット計画を率いるのはゲイヴィン=ロ スである。ロスはグレイのことをまったく信用しておらず、運営委員会の粛清と同盟の破棄を目論んでいる。ロスにとってクロフトは私利私欲に囚われた日和見 主義者であり、リングウッドは狂人である。ロスは彼らの排除を計画しており、デルタグリーンにクロフトとリングウッドの一派を片付けさせようとしている が、クロフトらはロスの意図を知らない。

 NROデルタの指揮官を務めるのは、ロスの片腕ともいうべきアドルフ=レプスである。レプスはデルタグリーンの元工作員で、1969年にカンボジ アで行われて300名の犠牲者を出した作戦の生き残りでもある。1980年にはエリア51でマジェスティックの代表とグレイの会見に立ち会った。ロスに 取って代わろうという野心を抱いているが、今のところは彼の忠実な部下であり続けている。きわめてサディスティックで反社会的な人物。

MJ-4 Project SIGMA

 地球外生命体との通信を任務とし、グレイとの「ホットライン」の維持を担当している。フリードライヒ=ラウンズ博士に率いられる。ラウンズはリングウッド博士の忠実な弟子であり、グレイとの同盟を心底から支持している。

MJ-5 Project MOON DUST

 地球外生命体の宇宙船の拿捕・撃墜・回収などを担当するが、グレイとの間に条約が締結されてからは活動が大幅に制限された。ユースティス=ベル空 軍中将に率いられる。ベル中将はグレイを侵略者と見なし、もっとも強硬に同盟に反対している。表向きは同盟を支持しているロスと違ってベルは声高な批判者 なので、クロフトは彼を眼の仇にしており、彼の排除を画策している。

MJ-6 Project PLUTO

 ロズウェル事件で回収された宇宙船の残骸から得られたり、グレイから提供されたりした科学・技術の研究を担当する。カーティス=シェンク空軍少将に率いられる。国益のために少数の市民が犠牲になるのはやむを得ないとシェンクは考えており、グレイとの同盟を支持している。

MJ-7 Project REDLIGHT

 ロズウェル事件で回収された宇宙船の修復を目的として発足し、今日でも反重力機関の開発を行っている。エドワード=ペン博士に率いられる。恒星間航行の実用化が夢であるペンはグレイとの同盟を支持し、グレイに対して依存の度合を深めつつある。

MJ-8 Project DANCER

 エイリアンの生物学的研究を担当し、ロバート=ヴァーニー博士に率いられる。ヴァーニーは同盟の支持者だが、グレイに対する生体実験を行いたがっており、ムーンダスト計画でグレイが捕獲されることを期待している。

MJ-9 Project OVERVIEW

 宇宙空間における偵察を任務とし、太陽系内のどこかにグレイが基地を建設していないか監視している。アントニー=コレロ博士に率いられる。コレロはクロフトの力で運営委員になった人物であり、クロフトと同じく私益のために同盟を支持している。

MJ-10 Project SIDEKICK

 米国と同盟関係にある国の諜報機関がエイリアンに関する情報を手に入れていないか調査する。トーマス=ディアホーゼン陸軍中将に率いられる。ディ アホーゼン中将も私利私欲のためにグレイとの同盟を支持している。サイドキック計画の前任者はクロフトとディアホーゼンに抹殺された。

MJ-11 Project LOOKING GLASS

 共産圏および旧共産圏の諜報機関がエイリアンに関する情報を手に入れていないか調査する。ジョージ=ゲイツ海軍中将に率いられる。ゲイツ中将によ れば中国と旧ソ連邦が米国の最大の敵であり、それゆえ彼はグレイとの同盟を支持している。グレイが提供する科学・技術によって米国が優位に立てるからであ る。

MJ-12 Project DELPHI

 他の部門が収集した資料の整理および管理を担当し、ウェイン=ハール博士に率いられる。ハール博士はグレイの侵略を憂慮し、同盟の破棄を主張している。クロフトにとってはベル中将と共に目障りな存在である。