バイクデザイン考: ヤマハの場合 (00.8.17)


かつてヤマハはバイクのデザインを外部のデザイン会社に委託していた。今でもそうか知らないが、ヤマハのバイクはデザインに特色のあるモデルが多い。

MAJESTYを初めて目にしたのは、路上に停めてあった1台に目を奪われたときだ。その洗練されたデザインから、いったいどこのメーカーのものだろう、と思わずエンブレムを捜したものだ。てっきり、外国製のバイクかと思ったら、ヤマハだった。この250ccの大型スクーターはそれまでホンダのFUSIONが代表格だった。これは乗り心地は良かったようだが、デザインは好みが別れた。その胴長のボディから別名、シロナガスクジラと呼ばれていた。

このクルージングタイプのスクーターに、まだまだデザイン上の独創の余地があったことを、MAJESTYの出現で各社が思い知らされたはずだ。MAJESTYをコピーするように、ホンダがFORESIGHT、スズキがSKYWAVEを出して来た。それぞれの性能、品質の比較は別にして、FORESIGHTはデザインの完成度がいまひとつだったために苦戦したが、後継モデルのFORZAでやっと挽回ができそうな勢いだ。

それはともかく、MAJESTYによって大型スクーターがスポーツバイクの仲間入りしたのは、ヤマハの功績と言えるだろう。

これで思い出すのは、かつてSRX400/600が、単気筒エンジンのスポーツモデルとして登場したときのことだ。その洗練されたデザインと質感には新鮮な驚きがあった。もうひとつのロングセラー、V-MAXはこれまた、他のどれにも似ていない孤高の迫力を感じさせる。

さらに、ヤマハの業績として輝くのは、原付きのVINOのデザインだろう。レトロ調と呼ばれるが、もともとスクーターで有名なイタリアのメーカーの、そのデザインを踏襲したものだ。VINOはその見慣れた基本スタイルに、まだデザインの改良の可能性があることを示した。

デザインとは不思議なもので、とってつけたような外見は人を惹きつけることがない。生物の種が皆、それぞれに完成された美しい姿をしているように、走るために生まれてきたバイクも、そのコンセプトにふさわしいデザインを得て、初めて息吹くかのようだ。かつてKATANAの出現は、バイクデザインの自由度がまだまだ未開拓で残されていたことを教えてくれた。そうして、KATANAが最後でなかったことをデザイナーは示し続けている。とりわけこれからは、バイクに関心のなかった人の興味を引くくらいの、デザインの新境地を切り開くことが、メーカーにとっても関心事だろう。スクーターに関心のなかった私なども、MAJESTYなら乗ってもいいな、と思うくらいだから。



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