コーヒーブレーク「ニュー ライナックス」(00.11.14)

私のB5サイズのサブノートThinkPad530CSは、4年前にLinuxを試すために買ったものです。その時バイブルにした「Walking Linux」という本の付録CDには、配布パッケージ( ディストリビューション)Slackware 3.0.0 が入っていました。カーネルのバージョンは1.2.13。今となってはずいぶん古いですね。内蔵HDが540MBしかなくて(今では「しか」でけど、その時は「も」だったんですよ)340MBをLinuxに割り当てていたのだけれど、アプリケーションを追加するのにはもはや不足なので、大容量のものに交換しようと思い立ちました。でも、IBMのサポートデスクに電話したら大容量の純正HDはないと言われてしまい、だめもとでヨドバシに行ったら、動作が確認済みのToshiba製2.1GBのHDがありました。(「あった」のか「売れ残っていた」のか分かりませんが、ありがたいことです。)

ノートパソコンは、メモリー増設くらいはできるようになっていますが、たいていはHDの交換はユーザーではできないでしょう。私は幸い4年前に530CS を買ったときに、本体の分解の仕方まで記述のある活用本(*1) を同時に購入していました。そんな本が出るほど、モバイルPCとしてこの530CSとその前身の230Csは画期的だったんですね。それを見ながら本体をばらばらにしてHDを交換したものの、不器用な私では、やはりキーボードの固定用ツメをいくつか折ってしまいました。それでもちゃんと動いたからめでたしめでたし。パーティションを切って、1.5GBをLinuxに、残り600MBをDOS (Windows95)に割り当てることができました。

4年前にインストールしたときは使えるCDドライブがなかったので、フロッピー120枚を用意したものです。あの頃は元気だったなあ。今はそんなことするつもりは毛頭ありません。運良くLinuxで認識できるSCSIカードと2倍速CDドライブ(12倍速のまちがいではありません)を持っていた社員がいたのでちょいと拝借。さらに会社に商用版Turbo Linux4.0があったので、タダとばかりに、これを入れてみたけど、重くて遅いこと。しかもXウインドウが動かない。こりゃダメだ。そこで書店のLinux コーナーでで物色したら、Debian GNU/Linux のCD付き書籍(*2) が目に留まりました。内容を立ち読みすると、なかなかよさそうだ。とくにこのDebianパッケージには、ソフトのインストールからカーネルのバージョンアップまで簡単にこなす機能がついています。おまけに、ノートPCへのインストールについても補章を設けていて、かなり気合いの入ったDebian Linux 入門書です。

CDからのインストールは説明が丁寧なこともあり楽でしたが、ThinkPad530CSは古すぎるモデルのせいか、すぐにはXが動かなかった。そこで安達さんのMy Walking Linux HomePage を参考にXF86configの設定をマニュアルで書き換えたら、完璧に作動するようになりました。これでThinkPad530CSが再生した。えっ、ThinkPad530CS なんて知らない!? あ、そう。発売は5年も前で、仕様はこんなものです。

 HD: 540MB。それを2.1GBへアップ。うち1.5GBをLinuxに、600MをWindows95
 メモリー: 12MB。 それを20MBにアップ。
 CPU: Am5x86 133MHz
 LCD monitor: 8.4" DSTN 256 colors

今では中古でタダ同然で並んでいるかも知れませんよ。すぐゲットすることですね。この後継機種のThinkPad535はモニターがTFTの10.4" 65,536 colors になった優れ物。でも、これは手放す人はいないでしょう。

さて、なんで今更古いノートPCかというと、いじるバイクがなくなったので、その替わりでもあります。それよりも、わずか2,3年で陳腐化したと思って20万円以上もしたノートPCをいとも簡単に買い替えるなんて私にはできません。4年前のモデルでも、Linux ならサクサク動いてくれる。バイクなら古くなるほど価値がでますよね。バイクはみなスピードを競うレースのために生まれたわけではない。それにふさわしい「使われかたをすること」が大切だと思いません?私は530CSはモバイル用、普段自宅ではPowerBookG3です。

とは言っても、Linuxは、マッキントッシュやウインドウスと比べると、まだまだ個人でだれもが使えるパッケージではありません。(プレインストールされれば別でしょうが)個人でだれもが使えるようになるには、もう少し時間がかかりますね。だがひとたびそうなったら、とくに、中国、ロシアがLinuxを公式採用したら、一挙に世界標準になるのは目に見えています。(3年後にこのエッセーを読んでいるあなた、そこではどうなっています?)2000年の現時点では、Linux は個人ユースにはまだ黎明期。だからバイクと同様、Linuxを始める人には、手軽さよりもそこにあるビジョンに共感があることでしょう。

そのビジョンのひとつがGNUシステムとしてのLinux。フリーソフトとか、オープンソースとか呼ばれるが、そのもとになっているのがこのGNUプロジェクト。フリーのソフトでUNIX互換の完全なシステムを構築するという、その遠大さからいうと現代のピラミッド計画とも言えるでしょう。そのピラミッドの石ひとつになろう。

GNUとは "GNU's Not Unix"の頭文字が再帰するように考えた命名で、「GNUはUnixにあらず」という意味ですが、gnuとはアフリカに生息するヌーのことなので、GNU関係の書籍やサイトにはこのヌーがLinuxのマスコットのペンギンと一緒によく使われます。なんて楽しい遊び心でしょ。CBXはそれにいくらかあやかろうとしたのですが、再帰反復は無理があります。

GNUプロジェクトの公式サイトによればこのGNUはグニューと呼んでほしいらしい。でもね、せっかくだけどこれ、日本人の耳には響きがよくないです。日本語の語感だけじゃなく、gnuというスペルを見れば「ニュ」と発音したくなるのが世界の一般でしょうね。私は無知なままずっと「ニュー」で来たので、GNU Linuxは「ニュー ライナックス」でした。いまさら「グニュー リナックス」では歯が浮いてしまう。

ニューはnewに通じるからいい。 gnuも、ヌーまたはニューと発音する、と英語辞典にあるじゃない。


(*1) 笠原一輝、米田聰「ThinkPad 230Cs/530CS スーパーブック」(ソフトバンク 1995年11月 初版)
(*2) 武藤健志「改訂版 Debian GNU/Linux 徹底入門」(翔泳社 2000年9月 初版)



[楽しいバイクライフのために] へ戻る