若草色にかすむ里山。 走り慣れたはずの道、見慣れたはずの景色 それを包んでいる薫るような空気が 見えるようだ。 いつも、見えるものしか、見ていなかった。 走ることが当たりまえすぎたころ 気にも留めなかったさまざまなこと 気づかなかったことが どうしたんだろう この季節になると、わかってくる。 しばらく走っていないから、足腰もへたってしまったし いぜんのパワーも無くなってしまったことは くやしいけど、受け入れないとならない。 いまや、いきなり全力疾走しようものなら 足がもつれてしまうかも知れない。 それでも、毎日のように走らせてもらっていたころは 体の調子がいいのが自分でもわかった。 空気を、吸っているのではなくて 食べていたような。 いまは、仕事に追われるようになって 毎日はちょっと期待できない。 走るために生まれてきた私 走らないでじっとしている自分の姿など 想像さえしなかった。 それに、ときどき仲間が、消えて行く。 事故でなくなったものは、幸いいないが、 若いのに、故障してある日突然走れなくなったもの なかには、さらわれたきり戻って来ない仲間も・・・ あ、急にまわりが明るくなって、まぶしい。 私を覆っていたカバーが取られて 目の前に、ヘルメットをもった主人が立っている きょうは久々のツーリングらしい。 うれしい。