バイクは海を渡った、そして再び海を渡って登録者の元に(04.8.21 追記 04.12.25)
- 台湾からのバイク奪還紀 (前編) -




台湾で押収された盗難バイクの引き取りに、8月15日から19日まで、台湾に行って来ました。ここにその速報をお届けします。

台湾で見つかった!

当サイトのコラム「ヘッドライト・テールライト」で断片的ながらお伝えしていたように、5月中旬、台湾の警察が押収したバイク6台のうち3台がCBXサイトの登録車と判明した、との連絡が盗難対策の活動を一緒にしているグループから入りました。

直ちに登録者に連絡をとり、3名共にぜひ取り戻したいとの意志を確認しました。残念なことに、その後偽装打刻された車体番号の鑑識の結果、うち1台DUCATI996が番号1字違いで別の車体であることが判明しました。

結局、当サイトに登録されていなかったほかの4台のうち、グループの者が被害者を突き止めて取り返す意志を確認できたのは、番号違いのDUCATI9961台のみでした。今回の引き取り交渉の対象車は、したがって以下の3台です。

1. 登録番号2'500 YZF R1 車体番号JYARN09100 0009551 '03年7月盗難 足立区 
2. 登録番号2'519 VTR SP2 車体番号JH2SC45A22M201989 '03年7月盗難 大阪市 
3. DUCATI 996 車体番号ZDMH200AAWB002298 '03年12月盗難 大阪市 

本来は、所有者自身が直接訪台して、自分のバイクであることを証明して引き取るのがスジですが、上記3名とも、時期的な問題、職場の事情でどうしても休暇をとれないとあって、今回は一緒にバイク盗難監視活動をすすめてきたグループの仲間の中から、代理人として池谷さん(BMWモーターサイクルオーナーズクラブ日本支部)と私、大塩の二人が台湾に向かいました。池谷さんは台湾の協力者との窓口を担当されています。

台北警察の好意的な対応にびっくり

16日朝、所轄の大同警察署(台北市政府警察局大同分局)に向かうと、なんとその入り口真ん前に3台のバイクが並べられていました。そして、多数のテレビ、新聞雑誌の取材陣が待ちかまえています。こちらは、担当と窓口で折衝になるものとばかり予期していたのですが、耿継文分局長(署長)との面会までセットされており、その会見のシーンを取材までされました。

押収しているバイクをなんとか日本に送り返すために、署全体が協力してくれていること、さらに、単なる民間人の私達ふたりに警察署長が直々に会うというオープンさと迅速な実行力に驚いてしまいます。

会見時、耿署長が、

「バイク盗難に台湾人が関わっていることを恥ずかしく思う」
と詫びる発言がありましたが、私は即座に、
「とんでもありません。盗難は不幸なことですが、こうして盗難バイクの摘発に尽力されている台湾の警察の方々に心から感謝します」
と応じたものですが、内心は、バイク窃盗が野放し状態の日本を逆に恥ずかしく思わざるを得ませんでした。 私たちのこの会見の様子は夜のテレビのニュースでも報道されたそうです。左の写真は翌日の全国紙『自由時報』に掲載された記事。

さて、バイクは大同警察分局に「保管」されている状態で、これを引き取るには司法上の手続き、それに伴う書類が必要になります。それを、分局刑事組の李謀旺組長(組とは日本でいう課)と配下の方々が全面的に支援してくださいました。

こうして、翌日には引き渡し許可が裁判所から下りて、日本から運ばれてきた3台のバイクが晴れて所有者の手に戻りました。


なんと、白バイ隊員が協力者

台湾では、無許可の大型バイクを乗り回して、白バイとのバトルの末に取り押さえられるケースが茶飯事。今回も、そうして押収されたバイクが、日本からの盗難車ではないか、なんとか被害者に返すことができないかと、自身が大型バイクの愛好者でもある白バイ隊員の鄭永銘(大同交通分隊所属)さんが、車体番号の偽装打刻を鑑識に回してくれたことが発端となったものです。

けれど、インターポル(国際警察)経由で日本に情報を送っても、一向に返還の動きが聞こえてこないので、鄭さんが友人から教えてもらったCBXサイトで検索したところ半数がヒットしたことから、急展開の運びとなって、今回の訪台にまで漕ぎ着けることができました。

鄭さんは私たちの滞在中、台湾の協力者グループと共にずっと警察との折衝に同行して、力強い味方になってくれました。鄭さんは台湾で暴走バイク検挙率ナンバーワンを誇るライディングテクニックの持ち主。白バイ仕様とはいえ850ccのR850RTで、リッターマシンのレーサーバイクを取り押さえてしまう。それでも、逃げるバイクを確実に安全に取り押さえるために、もっともっと腕を上げたい、そのために、日本で白バイの特別訓練研修を受けたい、と夢を語ります。(右の写真は記者に偽装刻印のフレーム番号を説明する鄭さん)


なぜ取り戻すことができたのか

以上は細部を省略してサクセスストーリーとしてお伝えしています。実際は、日本で書類一枚を準備するのにも、幾多の困難と模索がありました。なんと言っても、取り戻す手続きが条約で決まっているわけではないのですから、出たとこ勝負を覚悟で乗り込まないとなりません。ただ、書類としては当然のことながら、1)所有者であることを示す書類(車検証など)、2)盗難されたことを証明する書類、3)被害者本人であることの確認、が求められることは予想がつきました。それに加えて、今回は代理人が行きますので、4)代理人証明書、が必要となります。

結局は、日本の台湾交流協会(正式国交がないため大使館に相当する業務を司る)に何度も足を運んだり、台湾語への翻訳など、分厚い書類となりました。しかもそれぞれに「認証」が求められ、代金もかかります。

でも、問題はコストではありません。いくら金を積んでも、戻せる保証とはなりません。また、書類が揃えば自動的に戻されるわけではありません。今回取り返すことができたのは幸運に恵まれたこともありますが、結局は、

1.被害者本人に取り返してやるという強い意志があること
2.現地にバイク窃盗に対抗する共通の志をもつ協力者がいること
3.現地警察が味方になってくれること
という3つが揃ったためだと思っています。つまり、最後は「人」の問題であって、これが揃えば、困難があっても、時間がかかっても、いつかバイクは持ち主の元に戻ることができることでしょう。

これまで、個人が海外からバイクを取り戻した例はありました。しかし、それは所有者の相手やショップと示談に持ち込むことに成功して取り返したものでした。それは、全くの個人の力ではできないことで、かつ模範となることができないものです。

今回は、その国の政府機関から正規の手続きにより返還され、日本に送り返すことができた初めてのケースになります。しかも、一度前例ができれば、次も今回に準じた手続きで返還が可能になります。これまで、海外に持ち出されたらもうダメだ、と諦めていたライダーに大きな励みになるものです。

私にとって台湾は今回が初めての訪問になります。同じ警察とはいえ、日本との違いに気持ちのいいカルチャー・ショックを覚えるとともに、現場、現地に行かないと分からないこと、知らないままでいることがこんなにあるものだと、あらためて台湾に来て良かったと満足感があります。


登録されていないこれだけの「新車」がスクラップになりかけている

台北で押収されたすべてのバイク情報が鄭さんに集まるわけではありません。大抵のバイクは、保管期間が切れて持ち主が現れないとスクラップにされます。そんな保管場所のひとつを台北にいる間に訪問させてもらえました。長いこと雨ざらし、炎天下の下で錆びついているバイクもありますが、なかにはまだ新品のようなバイクもあります。

さらに、高雄でもバイクが押収されているというので、急きょ日帰りで高雄に飛んで現物を見せてもらうことができました。こちらは警察署の屋内倉庫に保管されており、ここでも同様に新品のような大型バイクがずらり。

調べられるだけの車体番号を書き写しましたので、以下に列記します。

台北
  BMW R1200C  WB10424JXWZB02302
  BMW R1100RT  WB10413J2XZD22269
  BMW R1100GS  6369042-R1100GSCJ  (登録番号166 でヒット 04/8/22)オーナー所有権放棄
  HARLEY LOW RIDER  1HD1GDV15YY387768  (下5桁目は 9 とも 0 とも) (オーナー確認 04/8/25)
  HARLEY  FLSTC?  1HD1BJL41TY034956  (下6桁目は 9 か、サビ多し)
  HONDA CBR600F  JH2PC35G22M381675 (下3桁目は 8 とも 0 とも)
  HONDA CB1300SF  SC40-10651312
  HONDA CB400SF  NC27-1004122
  HONDA CBR FIREBLADE  JH2SC33A0WM207616
  HONDA CBR1100XX  JH2HC2SC35AXVM007595
  YAMAHA YZF-R1  JYARN091000083194  (下5桁目は 3 とも 0 とも)
  SUZUKI HAYABUSA  JS1A113140010074

高雄
  BMW R1100GS  0434151R1100GSCJ
  BMW K1200RS  WB10544J1VZA22829 【12月訪台で引き取り完了】
  BMW R1100RT   WB10413J1ZD19185  (下4桁は 0185 とも 9105 とも)
  HONDA X11  SC421000208 (オーナー確認 04/8/29 保険求償済み) 
  HONDA VARADERO  JH2SD01A9YM102493 (オーナー確認 04/9/12 保険求償済み)
  HONDA VTR-SP1  JH2SC45A4YM005741 (オーナー確認 04/8/29) 【12月訪台で引き取り完了】
  HONDA CBR750  RC27-1005114
  YAMAHA V-MAX  JYA1FK00XFA005302
  YAMAHA FZS1000  JYARN066000000480
  YAMAHA FJR1300  JYARP041000004778 【12月訪台で引き取り完了】
  SUZUKI HAYABUSA  JS1A111120109639
  SUZUKI GSX?  GK760A-104196
  KAWASAKI NINJA  ZX900B-011245
  KAWASAKI ELIMINATOR?  VN250A-005067
  ほかに HONDA GOLDWING  50周年記念車があったが、車体番号が見つけられず

全くがっかりしたのは、これだけの盗難車がありながら、1台も当サイトのリストにヒットしなかったことです(追記参照)。もし登録者のものならば、即座に隔離して保管したかったのですが、どうすることもできません。もしも、当サイトの存在を知らずにいた未登録の被害者で、ご自身のバイクを上のリストに発見して、かつ取り返す意志がおありなら、まだ間に合いますので、至急ご連絡ください。たとえ上のリストに該当しなくても、これから発見されるかも知れませんので、登録の手続きをしてください。愛車を救うのはあなた自身です。

それを思うと、今回取り戻した3台のうちの2台が、当サイトのリストにヒットしたことは全くラッキーだったとしか言いようがありません。それがなかったら、私は台湾に来ることはなかったはずでした。

さて、台湾で手にしたバイクは、これから船に積まれ、海を越えて、3人の待つ日本に戻ってきます。その記録は後編として遠からず報告できることになるでしょう。



追記 (04/8/22)
 台北と高雄で保管されているバイクの車体番号の追加分を入手しました。上記のリストに加えましたが、そのうちの一台がリストでヒットしました。登録者にはすでにメールをお送りしました。99年7月と、5年前のものですが、連絡がとれることを祈っています。
 なお、十分気をつけたつもりですが、読み取りミスがないとも限りませんので、該当機種の登録者の方は、番号の一字違いとか、似ているケースがないか、一応チェックいただけるでしょうか。

追記 (04/12/25) 第2次訪台で回収できたバイク
 12月に第2次のバイク引き取り訪台がありました。今回は上記のリストから被害者を特定できたバイクに加えて、あらたに押収されたバイクから8台を引き取ることができました。そのなかには当サイトに登録されていたNo.2'856 CBR600F4i も含まれています。


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