コンテナの扉は歴史のページの開く音がした(04.9.29)
- 台湾からのバイク奪還紀 (後編) -



帰ってきた愛車の前で、テレビ局のインタビューを受けるYZF-R1の村上さん(横浜の保税倉庫にて)


3台のバイクを載せた船は9月24日横浜港に到着、コンテナは本日(29日)午後2時半に開封して、事故や不具合もなく届いたことを確認、オーナーと対面することができました。ここに速報をお届けします。

やっと船が入港した

当初9日にバイク公開と記者会見を予定していましたが、台風とおそらくは現地での輸出申請の手続きの関係で船積みが遅れて、9日は記者会見のみとなりました。ようやく、今回3台のバイクを公開することができました。台風の影響で時々激しく降る雨の中、再度テレビ局、新聞社、バイク雑誌から取材に来ていただき、公開でコンテナからバイクを取り出しました。

なにしろ、どんなふうにコンテナの中でバイクが梱包、固定されているのか、はっきりと分からないので、開けて見るまで安心できません。バイクがひっくりかえっていたら、ただちに被害を調査して保険請求の手続きをしないとなりません。海上保険はそのために掛けるものですから。輸入の前例のない貨物の場合、いつも荷崩れを警戒しないとなりません。

ぶっつけ本番で、コンテナを開けるところから公開することにしていましたので、予定どおり午後2時半にコンテナを保税倉庫のプラットホームに着けます。テレビカメラはコンテナが運ばれてくるところから撮影していました。


バイクも笑った

通関前にコンテナを開けることは通常はないのですが、今回は横浜税関から特別の許可をいただき、保税倉庫内でコンテナを開けるとともに、マスコミによる取材も公開とすることができました。3台のバイクのオーナーのうち、東京のYZF-R1の村上さんが立ち会ってくれました。

コンテナの扉が開くと、中にそれぞれパレットにしっかりとロープで固定された3台のバイクが、こちらを向いていました。「向いていた」というより「見ていた」ように感じたのは、3台ともデュアルヘッドライトの顔のせいだけだったでしょうか。少なくとも私には、先日見た映画の『アイ、ロボット』とイメージが重なります。「戻してくれて、ありがとう」と物言えぬマシンはもどかしいことでしょう。

村上さんは晴れて愛車と対面。本人はテレビカメラの前で緊張気味でしたが、初めてバイク発見を伝えたときの喜びは今でも変わりありません。 8月は休みがとれなくて、私たちと台湾に行けなかった村上さん、これから通関後、整備と再登録が済んだら、愛車を日本に送り返すために努力してくれた「台湾の警察とまだ見ぬ友人の皆さんにお礼を言うために、次回のバイク引き取り訪台のツアーには是非一緒に参加したい」。

なお、取材に来てくれたTBSが、首都圏だけですが、夕方の6時からの「ニュースの森」で、9日の記者会見の取材シーンと一緒に、今回のバイク到着をニュース報道してくれました。この原稿を書いている間も、「ニュースを見ました」と登録依頼のメールが入ってきます。夕方の時間帯は、サラリーマンライダーの目に留まりにくでしょうが、それでもやはりテレビの影響力は大きいですね。


エンジンキーの怪

今日は、バイクが無事着いただけでもうホッとしていたのと、取材に応じるのに忙しかったために、気づかないでいたのですが、保税倉庫を後にして関係者でミーティングしている時に、村上さんがキーを二つ見せてくれました。一つは彼が持っていたオリジナルのスペアキー(小さいほう)、もう一つはバイクに着いてきたもの。

じつは、この二つ、どちらでもエンジンがかかるのです。見てすぐ分かるように、まったく切り欠きの形状が違うエンジンキーなのに。私たちはてっきりキーシリンダーは交換されていたものと思ったのですが、どうやらオリジナルのままらしい。おかしいのは、オリジナルキーはもちろん「YAMAHA」のロゴがありますが、大きなキーの一見「YAMAHA」と見えたロゴは、よく目を凝らして見ると「YAWANA」とあります。

いったいこのキーはなんでしょう。ひょっとして、マスターキーのようなもので、これでR1なら皆エンジンがかかってしまうのでしょうか。特定機種が路上でいとも簡単に盗まれるのは、エンジンキーのマスターを窃盗団が持っているのかも。

もしそうなら、キーロックだけで路上に駐車するのは「乗って持っていってください」と差し上げているようなものです。組織的窃盗団はただのコソ泥集団ではありません。国際的な知能犯罪グループを見くびってはいけないとう警告になります。

こうして、現場現物主義で行くと、予想もしなかった新事実が次から次と出てきます。新しい発見から、犯行のシステムも常にアップデートされている印象を受けます。

今回の奪還記はこれでとりあえず完結。この後、3人が再登録を済ませて、晴れて愛車を走らせることができたら、きっとその体験記を寄せてくださると期待します。それに、現在台湾で返還を待っているバイクの引き取りに第2次の訪台計画もスタートしています。



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