コーヒーブレーク 「ノルウェーの森?」(04.12.11)


ビートルズナンバーの「Norwegian Wood」が日本で「ノルウェーの森」として知られているのは、これが小説のタイトルにコピーされたせいも多分にあるではないかと想像します。

私はいわゆるビートルズ世代ですが、私自身はビートルズは特別好きというわけでもなし、もちろん嫌いではないのですが、レコードやCDは一枚もないし、カセットにコピーしたことさえありません。ですので、この偉大なメロディーメーカーの曲は大抵知っていても、題名をほとんど知らないでいます。だいいち、ビートルズファンだって、いちいち訳詩なんて見ていなかったし、歌詞の意味にとんちゃくなかった。

その「ノルウェーの森」について、この日本語訳はじつは誤訳で、ほんとは「ノルウェー産の木材、またはそれで作られた家具」ではないだろうか、という解釈をずいぶんと昔ですが、読んだことがあります。岩波書店の『図書』に、どこかの大学の先生が書かれていたものです。森ならば複数形のwoodsのはずで、単数形なら森にはならない、と文法的に解釈するとともに、辞典の用例も引きあいにだしていたと記憶します。きっと、同名の小説が評判になっていたことに言及していたはずなので、すると87年くらいのことだったでしょうか。今でもネットで検索すると同じ議論が続いています。長いな。

でもその時は、Norwegian Woodってどの曲のことが分からず、また敢えて曲捜しもしないでいました。ただ、その寄稿文がこの歌詞を生まじめに解釈していたように記憶します。つまり、一人で生活している女性がいて、ノルウェー材の古い、または安い家具を大切に使って、椅子もないつつましい生活をしながらも、自立した生き方をしている、云々。まあ、『図書』というせいもありそうですけど。

ふうん、ビートルズがそんな良い子向けの歌詞をつくるとは珍しいね。

本屋で「ノルウェーの森」というタイトルを目にする度に、「ノルウェー材」だったら誰も買わないね、と勝手に想像するだけでした。それで終わっていたのに、先日、ついにiPodを買いました。そしたら、今まで知らなかった iTuneの使い方まで知るところとなり、曲のダウンロードサービスが日本では始まっていないものの、試聴が30秒できること、さらに、曲捜し、アーチスト検索ができることが分かりました。いままで、いい曲だと思っても、どのCDか分からずにいた曲が、タイトルで検索、試聴することで特定できるようになりました。

そして、ふと思いだしてNorwegian Woodを捜しました。聴いてみると、なんだ、これだったか。ついでに、Google で捜して、歌詞もはじめて全文読むことができました。

さて、この歌詞でいうNorwegian wood ははたして「ノルウェー材」かしら。それは辞書と文法を頼りに高校生が翻訳したら、そんな解釈も出てくるでしょうが、コンテクストからすると無理があります。これはストレートな内容のバラードではなくて、いかようにも解釈できるあいまいさを持たせています。その意味では、外国語として英語を学んでいるだけの学生には読み解くのが難しい。

では、英語圏の人たちにはすんなり理解できる内容なのか? やはりGoogleで検索すると、意外にも、英語を母国語としている国民でも解釈がてんでばらばら。日本と大差ありません。それでも、Norwegian woodの考えられる意味としてもっともらしいのが、

 1) 木材モドキの安い家具。
 2) Knowing she would をもじったもの。「彼女もそのつもりでいるから」という意味。
 3) 麻薬。スラングでマリファナのことを指す。

といったところ。もちろん「森」なんてないのは言うまでもありませんが。曲と原詩から私の受ける感じでは、たぶん2)と 3)を暗に含ませて、意味を特定されないようぼかしている、といったところ。So I lit a fire は、暖炉でもたばこでもなくて、「家に火をつけた」という意味でしょう。マザーグースのようなナンセンスソングとも、ドラッグでインスピレーションを得て語呂合わせしたサイケデリックソングともとれます。

純愛ドラマやラブソング流行りの現今、この曲がレコーディングされた1965年がどんな時代だったか、若い世代の人たちにはそのカウンターカルチャーの空気は想像することが難しいことでしょう。Norwegian woodの意味にとんちゃくなくビートルズを夢中になって聴いていた反抗世代とは様変わりして、今「ノルウェーの森」をラブストーリーと勘違いして聴いているのは、そこに感傷とノスタルジーを求める良い子世代かしら。

さて、私のiPod にビートルズは似合うかな。No way!

I once had a girl
Or should I say
She once had me
She showed me her room
Isn't it good
Norwegian wood?

She asked me to stay
And she told me to sit anywhere
So I looked around
And I noticed there wasn't a chair

I sat on a rug
Biding my time
Drinking her wine
We talked until two
And then she said
"It's time for bed"

She told me she worked in the morning
And started to laugh.
I told her I didn't
And crawled off to sleep in the bath

And when I awoke
I was alone
This bird had flown
So I lit a fire
Isn't it good
Norwegian wood 


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