ネットオークションの盗難バイクを追う (05.1.17)


ある個人が不要となった商品を、それを欲しがっている他の人に売る機会を提供するネットオークションは、それはそれで確かに便利なもので、ゴミになるところだった品物が引き続き使われることで資源の活用になるだけでなく、売る側と買う側が両方とも満足できるシステムとして、これからも利用が広がる市場と思われています。

その利便性の反面で、ネットオークションが詐欺犯罪と盗品転売に利用されている事実もあります。盗んだバイクを、あるいはそのパーツを、転売している個人・業者が摘発される事件が報告されていますが、まだまだその全貌どころか実態さえ掴めておりません。掴めていないのは、被害者からの情報が統計集計されていないことや、検挙件数が少ないこともありますが、購入する側でも盗品と分かって買っているケースもあるものと想像します。

これまでにも当サイトの登録者から、ネットオークション上に自分の盗まれたバイクを見つけて、取り返したという「発見のお知らせ」を何件かいただいております。さらに、サイト上では公表しておりませんが、検挙にまでは至らなかったものの、オークションを監視していたら自分のバイクとそっくりの出品があり、それを警察と主催者を通じて追ったケースもあります。

いったい盗難されたバイクのどれほどが、転売されているのでしょう。より正確な言い方をすれば、いったいどれだけのバイクが、転売目的で盗まれるものでしょうか。

警察庁発表の2003年の犯罪統計に、以下の数字があります。

オートバイ窃盗 
 認知件数     154,979 
 還付件数       59,599   (38.5%)      
 検挙件数       12,447   (  8.0%)     
 検挙人員       11,213 うち少年 10,669  (95.1%)   
検挙件数と検挙人員がほぼ近い数字であることと、検挙人員のうち少年が95%を占めているということは、検挙されるケースは少年が乗り回し目的で盗んだものがほとんど、ということになろうかと思います。

さらに、還付件数が検挙件数の5倍というのは、うち捨てられて発見されるも、犯人は分からず仕舞いというケースがこれだけあることになります。

おそらく、検挙されたり、放置されていて見つかったバイクのほかにも、廃棄されたまま発見特定されずにいるバイクもあるでしょうから、それを含めた「仮想還付」総数は認知件数の50%ほどを占めるものでしょうか。

この仮定の上に立つと、それ以外のバイク、つまり年間で7,8万台のバイクが、あるいは海外へ、あるいは個人売買、店頭売買、ネットオークションという転売市場に流れたり、またはは犯人自らが使っている、という構造が見えてきます。

この転売市場のうち、魅力的なのが、海外密輸とネットオークションです。

なんといっても、密輸目的の大型バイクは、報酬単価が大きい上に、台湾や中国市場が大きいので、外国人窃盗グループには花形商品です。けれども、単価の小さい中型までのバイクでも、量をさばくことにより利益をかせぐことができるし、法整備がされていないことを利用することで、かなり「安全に」ビジネスができるネットオークションに流れる必然性が見えてきます。

ネットオークションを覗いたことのある人なら、ずいぶんと怪しげなバイク出品があることに気づいていることでしょう。「書類あり」とあっても、どんな書類なのか。車検のないバイクはとくに再登録のための書類が偽造されやすいことは周知です。

もしもネットオークションでバイクを購入しようとするなら、まずは出品者にVIN (車体番号)を問い合わせましょう。理由を聞かれたら、盗難バイクでないことの証明のためとはっきり言うことです。それで相手が躊躇するなら、まず盗品でしょう。

もし自分のバイクが出品されているのを見つけたら、すぐに警察に通報して、オークション主催者に出品者情報を問い合わせてもらいます。その際に重要なことは、たしかに自分のバイクであることを第三者に証明できる決め手があることです。そのためには、自分にしか分からないバイクの傷や特徴を記録する、またはわざと付けて、その写真を撮っておきましょう。

オークションや個人売買の主催者はVINの提示を強制するだけで、100%とは言えなくとも、ずっと安全に取引ができる市場を提供できるはず。ひょっとしたら、盗品を掴まされた購入者も、それが盗品と気づかないでいるかも知れません。書類が偽造だったり、書類の車体番号とバイクの車体番号が違っていても、気づかないで乗っていることも、あり得ることです。

中古バイク、とくに車検のないバイクに乗っている人は、車体番号を自分の目で確かめたことが、はたしてあるでしょうか?



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