メーカーを持たない国からの二輪車報告 (06.7.17)


二輪メーカーを4社も持つ日本とはちょっと違った視点を、メーカーを持たない国の二輪事情から教えられることがあります。

ひとつは、日本においては、二輪事情がなにごとにつけメーカー主導であって、モーターサイクリストはその購買者という位置付けが強い事情から来るように見えます。二輪にかんする各種協会がありますが、それらはメーカーが構成主体であって、二輪産業の枠の中での議論が中心です。そのために、製造販売に関する統計は完備しています。一方でライダーの声を代弁する役割をこれまで果たしていたのは、各種二輪雑誌だったかも知れません。

いやしくもモーターサイクルが走っている国ではどこでも、二輪盗難が日常化していますが、その実態は意外なほど知られないままであるのが、これまた共通しています。ある程度、犯罪統計はあるのですが、その数字がいったいどう利用されうるのか、疑問になることがあります。つまりは、二輪盗難の被害を減らそうという目的のために活動している個人団体にとってこそ、統計数字もおおいに役立ちますが、そうでなければ、「盗難が多いのでバイクは乗らない」という判断に、根拠をひとつ付け足すだけかも知れません。

インターネットで二輪窃盗の実態について検索していると、オーストラリアのサイトがヒットしました。

 Motorcycle Council of NSW

そこに、

 National Motor Vehicle Theft Reduction Council(訳すと「全豪自動車盗難対策協議会」か) 

が2001年に行った調査の報告、Motorcycle Theft in Australia (July 2002) の要約が紹介されています。それによると(原レポートからの補足も加えて)

2001年にオーストラリアでの二輪盗難件数(届け出数)は6,160台
自動車盗のうち二輪窃盗の占める割合は 5%
盗難されたバイクの発見率は 29%
 登録されている(プレート交付)のバイクの発見率は 36%
 未登録(プレート不要のオフロード用途など)のバイクの発見率は 19%
バイク以外の乗り物の発見率 77%

被害にあったバイクの半数以上はホンダとヤマハで占められており、それぞれ
1,945台、1,765台、それに889台のスズキ、787台のカワサキが続く。
1年間の盗難件数が6千台というのは、少ないという印象をもたれるかもしれません。ところが、オーストラリアの人口は約2000万人で、日本の6分の1。さらに、原付きバイクはわずかしか走っておらず、ほとんどが自動二輪車です。ですので、単純に人口比で考えると、日本で36000台に相当します。

この台数が全盗難車両の5%というのですから、自動車全体では12万台の被害があることになります。実際調べてみると、警察に届け出があった自動車盗難件数は2002年において113,389台でした。(Australian Institute of Criminology

日本の人口に直すと、70万台ほどになります。

オーストラリアは公共交通機関が日本ほど整備されていないため、自動車が生活必需品。そんなアメリカに似た車依存社会ですので、自動車の盗難も驚くほど多いことが分かりますが、その発見率が約80%と高いことが、二輪と対照的です。

レポートは、ライダーやショップのアンケート調査なども含んでおり、被害にあうのは自宅車庫や敷地内が半数以上であること、そのためもあり、ほとんどがキーロックのみの状態であることなど、日本とは家屋事情が違うことが反映しています。逆に、自宅車庫からの盗難がこれほど多いということに驚かされます。

発見率が低いのは日本と同じですが、当サイトと同様に、レポートはその分析で、バイク窃盗が金儲け目的のプロの犯行であること、IDシステムの欠如を指摘しています。

モーターサイクルはプロの窃盗グループの格好のターゲットであるが、その理由には
 - サイズ、重量の点で他の車両よりも盗難しやすいこと
 - オフロード用途ではナンバー未登録車が多いこと
 - プレートが外され、パーツに分解されると、個別車両としての識別手段がない
さらに、恒常的に海外へと取引されていることについて、レポートはこう結んでいます。
盗難バイクとそのパーツが国際的に取引されていることを考慮すると、国際的に認知
されたマーキングシステムのための論議が求められる。
メーカーのない国は、国民の生活と権利の保護という立場から、自動車盗のわずか5%しか占めないモーターサイクルであっても、自動車と同じ重きを置いているように見えます。それを担うのは、政府機関、協議会、ライダークラブの連絡組織、などです。メーカーを持つ国なら、もっと先導的役割が果たせそうです。


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