コーヒーブレーク「改憲論と石油枯渇」  (07.5.6)


連休は3日の憲法記念日に、1泊だけのツーリングで福島に向かいました。高速道路のSAで給油していましたが、ハイオクが142円でした。いつも、ガソリンってよくもこんなに安価でいられるな、と思います。牛乳より安いし、ペットボトル入りの水よりも安いことになるでしょうか。もっとも、私はペットボトルの水って買う習慣がないので、その値段には無頓着なのですが、水道の水が飲める文明の価値を、もっとありがたがっても良さそうに思います。

それはともかく、ガソリン、というより石油、はもちろん限りある資源です。なのに、あと何年石油がもつのか、という点については諸説あるものの、実際の埋蔵量などは、じつは科学的に調査された形では公表されていないのが事実です。したがって、ほとんどのドライバーにもライダーにとっても、深刻な関心事になりようがありません。

National Geographic の2004年6月号の特集『地球からの警告・枯渇が迫る石油』はこの事情を以下のように要約しています。

 このところ石油の専門家の間では、将来の見通しをめぐって激しい論争が起きている。悲観論者は、大半の油田は60年代初めに発見ずみであり、その後は発見のペースが鈍っていると指摘する。したがって、これから見つかる通常の原油はほとんどなく、世界の原油産出は2010年までにピークを迎える可能性があるというのが悲観派の結論だ。これに対して楽観論者は、油田探査を後押しする経済的・政治的要因を無視した単純な推定にすぎないと反論している。
 この論争の最終的な行方は、世界最大の産油地帯である中東にどれだけ原油が残っているかで決まる。
(http://nationalgeographic.jp/nng/sp/earth/200406/_04.shtml)  
私の学生時代には、石油はあと20〜30年しか持たない、というような議論もありました。私が車に興味を持たなかったのは、そんな背景もありますが、そもそも車が必需品ではなかったこともありました。しかし、石油は、なくなりそうでいて、いつまでも安いままで売られています。何度かオイルショックがあったにもかかわらず。

そんな石油枯渇30年説について、『ガソリン車が消える日』(舘内端 宝島社新書 2000年)ではつぎのように指摘しています。

 石油は30年でなくなるという石油枯渇30年説は、何度も否定されてきた。狼少年説とまでいわれるようになってしまった。そのために、石油が枯渇するといっても信じる人はほとんどいない。しかし、そこには大いなる誤算がある。
 これまでしばしば語られてきた石油枯渇30年説は、可採年数が30年というものであって、でなくなってしまうという風説が流れたのは、マスコミの理解不足と読者の誤解が重なったためではなかろうか。
 可採年数とは、原油の確認埋蔵量をその年の生産量で割った値である。(中略)可採年数は流動的であって当然なのだ。つまり、30年説はいくども繰り返されて当たり前なのである。(114ページ)
産油国にとって、石油埋蔵量はおそらく国家機密ではないかと想像します。産油国ばかりでなく、エネルギーを石油に依存しているアメリカなどの先進国にとっても同様でしょう。ブッシュ政権がイラク侵攻を強行したのも、ブッシュ個人の親子にまたがる確執もあったでしょうが、アメリカにとってエネルギー資源問題は防衛問題、つまり軍事問題であることが背景にあるものと、私は見ています。

このところ中国での石油消費の増加を考慮して、可採年数はあと10〜20年しかないとの見方を前提にすると、自動車メーカーは燃料電池など、非ガソリン車への移行をあと数年で開始しないとならなくなります。自動車業界の再編は、石油エネルギーの将来と非内燃エンジンの開発を見据えて進行しているものと見ることができます。

過去の石油パニックは、原油価格の高騰問題でした。もしも、石油の枯渇が現実的に見えてきたときは、価格だけの問題ではおさまらないパニックが起ることが予想されます。石油は、価格がどうなるかだけの問題ではなくて、石油を含むエネルギー資源問題が、環境問題とあいまって、私たちの次の世代どころか、私たち自身にとっても直視しないとならない課題として立ちはだかります。

上記『ガソリン車が消える日』は2000年の出版ですが、すでに憲法問題にも言及していたのは、当時としては大げさと受け取られたかも知れません。

 地質学者たちが指摘するのは、原油生産は原油埋蔵量の半分を使い切ると減退しはじめるということだ。(中略)大かたの予想は生産量が減退し始める時期は2010年ごろというものである。
 そのころになると、中東石油への依存度は50%におよぶという。世界の石油生産の半分は、中東が担うということだ。そうなれば、当然、OPECの価格統制力は強まり、供給不安が生じれば高騰もあり得る。そのころには石油の供給は減り、逆に需要は増えるので、買いたくとも石油が回ってこないこともある。中東石油の依存度が高い日本、中国、アジアの中東をめぐる外交は、きわめて厳しいものとなるだろう。
 ちなみに、日本の中東石油依存度は約76%である。これに対して米国は約25%、自動車大国のドイツは約18%、英国は約28%である。米国や欧州諸国では自動車は石油で走れたとして、日本でも可能かというと、かなりあやしいといわざるを得ないし、それでも石油で自動車を走らせるというのであれば、いよいよ戦争放棄の日本国憲法を改正し、再軍備、徴兵制を敷く必要があるかもしれない。それまでして、自動車を走らせる意味と価値があるのだろうか。(151ページ)


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