Riding Linux (98.11.29 / 追記98.12.2)


「バイクとコンピューターの接点」(98.9.20) でLinuxについて言及したが、最近のLinuxをめぐる動きは急だ。「CNET Briefs Japan」にもよく最新動向の記事が載るし、日経BPも「日経Linux」というオンラインマガジンの試験運用を始めた。

私がLinuxを使って見ようと思った直接のきっかけは、書店で「Walking Linux」(アスキー、1996年)という書籍を見つけたことだ。別にデスクトップでUNIXを動かすのはLinux でなくても他にPC UNIX があるだろう。だが、ノートPCでUNIX 環境を持ち運べるようにしよう、という著者たちの斬新、かつ挑戦的なアイデアにすっかり共鳴してしまった。欲しかったPowerBookの値段がなかなか手の届くところまで下がらないので、ならばLinuxだとばかりに、当時安くなっていたThinkPad 530CSを買った。初めてのDOS/V機だ。

外付けのCDドライブがLinuxでは使えないので、まずDOS環境で付録CDからフロッピーにコピーすることになった。その数、120枚。とにかく、パーティションを切るのも初めてなら、UNIXのコマンドも初めて。それでも「Walking Linux」の丁寧な説明に導かれてなんとかインストールできた。フロッピーの抜き差しが苦痛でなかったのは、ほんとにUNIXが動くのかしら、と半信半疑で心躍らせていたせいもある。

さて、無知な私がなんとかLinuxを使えるようになったのは、インターネット上のLinux 関連サイトまでこの本で紹介されていたせいだ。そこで530CS用パッチキットとその説明を公開してくれたハッカー(注)のおかげで、はじめてX ウィンドウがきれいに表示されるようになった。そもそも、Linuxそのものがインターネット上で育っているOSだ。世界中の優秀なハッカーがその開発に協力している。その人たちのおかげで、いま私たちはUNIXクローンの OSをフリーで利用できているのだ。その受けた恩にたいして、今の私はかえす能力を持ちあわせないが、インターネットについて考えるとき、いつもまずLinuxのことが浮かぶのは、それがインターネットの持つ力と可能性を象徴していると思うからだ。

以前から、ノートPCを買うなら2kg以下の重量のもの、と決めていた。それより重たいものは、持ち歩きに向かない。530CSは1.7kg、最近の軽量モデルとは比べるべくもないが、その分堅牢にできている。出張や旅行にはいつも持ち歩く。バイクでのツーリングでは、シートにくくりつけるより、リュックに入れたほうがいい。そして、それがマックOSのPowerBookでもなく、マイクロソフトOSのラップトップでもなく、実はLinuxノートPCだというのが、喩えれば、中型に乗っているけど、実は大型二輪ライダーだとは誰も気づかないだろう、とひそかな楽しみにすることと共通するものがある。

(注): ハッカーとは優れたプログラマーに対して、敬意を込めた呼び方。システムに侵入したり悪さをするプログラマーはクラッカーと呼んで区別するのが、インターネットの慣習。


追記:「Walking Linux」の著者の一人の安達昭仁さんが「My Walking Linux HomePage」でLinuxの稼働するノートPCの最新情報をまとめてくださっています。今、LinuxノートPC が cool です。いわば、DOS/VノートパソコンのWindows限定解除。(1998.12.2)





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