オフロードバイクの魅力(99.2.11)

山から下りてきたら、林道のバス停の近くに、それまで見たことのない二輪が何台か整然と並んでいた。我が登山クラブの中にバイクに詳しいメンバーがいて、あれはオフロードバイクだ、と教えてくれた。へえー、あれでもオートバイの一種なんだ、としげしげと見つめたことを覚えている。ストロークの長いサスから、私にはそれがバッタのように見えたからだ。まだバイクなどに興味がなかったころの話だ。

限定解除してから大型バイクには乗らずに、代わりにHONDAの XLR250R にしばらく乗っていた。身長160の私にとっては、シート高860のこのオフロードバイクのほうが、よっぽど「大型」バイクではあった。両足が浮いては困るから、少しリアサスの沈み込みを大きくして、なんとかつま先が着くようにした。ハンドルも長すぎたので、1cm ほど詰めてジャストフィットにしてもらった。



よく行ったのは、金峰山の峰越えの林道コース。山梨の塩山から、川上牧丘線、通称峰越林道、を登りきると、国師ヶ岳(2592M) 直下の大弛峠に出る。ここまでは、雄大な富士を眺めながら飽きることはない。特別危険な個所もなく、タクシーまでが登ってくるほどだ。4WDもたまに、OFFROAD EXPRESSというステッカーを貼ったピカピカの車が、恐る恐る走ってくるのに出くわすくらいだ。この大弛峠からは、長野側の川上村に下って、そこから埼玉側の、渓谷美豊かな中津川林道を走って、東京に戻る。4県にまたがるコースだ。

オフロードバイクのシート高とストロークの長さは伊達ではない。視座が高くなるので、風景が違って見える。それに長いストロークのサスは、石と岩がゴロゴロしている林道でも、よくショックを吸収してくれて、すこぶる快適だ。ただ、オンロードバイクよりも、タイヤのグリップをコントロールしなければならないから、その意味で、ライディングの上達のためにはオフロードをやったほうがいい、という声もよく聞く。一理はある。

さて、私が XLR250R を選んだのは、他でもない、そのデザインに惚れたからだ。グラム単位で各パーツの重量を削り込み、乾燥で111kg。シートは高いが、必要なストロークとトータルバランスの確保のためにはこれが必要。さらに、バッテリーレスでキック始動のみという潔さ。乗りたいと思う人だけ乗って欲しい、とでも言うかのような設計者の意地を感じてしまう。それより何より、かつてバッタのように見えたオフロードバイクの珍奇な基本スタイルが、そのカラーリングも含め、今や機能美を謳い上げるような進化を遂げたことに感慨があった。山の風景に溶け込む、というより、バイクがまわりの木々となにやら語り合っているような、そんな気がした時の一枚の写真。



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