THE ABYSS(99.2.28)

「タイタニック」のヒットで、同じジェームズ・キャメロン監督の「THE ABYSS」の完全版ビデオもやっと国内発売になった。キャメロンの熱狂的なファンとして、喜ばしい限りだ。私は映画館でタイタニックを7回ほど見ているが、アビスはビデオを含めると何十回見ただろうか。あ・び・す、日本語としての響きが悪いが、深淵、深海底という意味で、これに取って代わるタイトル名がなかったのだろうか。タイトルとしては吸引力に欠けた感がある。

映画は、海底油田掘削リグで働くダイバーが、沈没した米海軍原子力潜水艦を捜索するストーリーを縦糸に、米ソの軍事緊張、核弾頭の息詰まる処理、異星人との遭遇、液体呼吸、水中ロボットなど最新のテクノロジーを織り交ぜて展開する。ほかのキャメロン映画と同様、基調には、愛と勇気それと使命感的献身がテーマにあり、セックスを排除する。

そのアビスだが、最初の劇場用フィルムはカットが多く、その後完全版が劇場用として上映された時に見比べたら、改めてこの映画の意図が別のところにあったことが明らかになったほどだ。

北米に出張するたびにビデオショップで捜したが、この完全版は見つからないでいた。昨年、タイタニックを話題にしていたとき、私がアビスの完全版を捜していると言ったら、アメリカ人の社員が Fox から発売になったばかりのワイドスクリーン版のビデオを見つけて送ってきてくれた。今回日本で発売になったビデオは見ていないが、このワイドスクリーン版にはMaking of Abyss として、撮影シーンとインタビューが含まれており、キャメロンのファンにはありがたい。

アビスはSFX映画と思われているが、キャメロンのほかの作品、ターミネーター、タイタニック、と同様、SFXは完璧さを求めて特撮と意識されないように処理され、あくまでストーリーの展開、端役に至るまでの人物の性格創造、そして監督の驚異的な想像力が生み出した異星人の造形、をバックアップすることに徹している。

この映画は、特撮もさることながら、出演者たちの演技が並ではない。とくに、ダイビングをやる人なら水中での演技と撮影がいかに困難なものであったか、容易に想像できるはずだ。私もアマチュアダイバーとしてこの映画には特別の思い入れがある。

海中ダイビングは、取りたててモーターサイクルに関連があるわけではない。ただ、バイクに乗る人でダイビングも楽しむ人が多いことはある。どちらもアウトドアスポーツであることと、若いときに体験していれば、年齢を重ねたあとでも、楽しめるスポーツだ。それに、どちらもマシンとギアにサポートされることが共通する。それらは単なる「道具」ではない。命を預けられる信頼性がもとめられると同時に、それが故障したときのリカバリーを予め訓練しておくことが必要だ。海底10Mは、ダイバーでない人には恐ろしい深さだが、ダイバーはここで機材(ギア)を置いて海面まで戻る訓練を受けている。だから、水深30Mにいても、車で100Kmで高速を走っているときより安心感がある。

水深30Mが「深淵」に思われていた頃、同時に、馬以外に個人での自由で高速な移動手段もなかった。バイク、ダイビングとも、今、20世紀後半に生きている私たちが、歴史上初めて個人でだれもが利用できるようになった移動手段だ。私のバイクには、所属ダイビングショップのカメさんステッカーだけが、ちょこんと貼ってあった。



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