コーヒーブレーク 「意外なアカデミー賞」 (99.3.25)


アカデミー賞授賞式は意外でしたねえ。いえいえ、なにも、「プライベート・ライアン」 を押さえて「恋するシェイクスピア」 が作品賞ほかを占めたこと、じゃあないんです。「恋するシェイクスピア」 は、これはこれで面白そうで、日本での公開が楽しみですし、スピルバーグのこの戦争物も素晴らしい出来だったと思います。なんといっても、冒頭のノルマンディー上陸作戦のシーンが凄まじく、そのカメラワークに引き込まれて、まるでその場に居合わせているような気がしたのは、私だけじゃなかったでしょう。

まず、おや、と思ったのは、エド・ハリスが前列に並んでいたことでした。助演男優賞の候補だったかな、ノミネートされていたのを知らないでいました。ええ、私そんなにアカデミー賞に関心があったわけでもないので。で、意外だったというのは、エリア・カザンが受賞するとき、立ち上がって拍手する参加者もいれば、坐ったままで抗議するかのように腕を組んでいる人たちもいたことでした。カメラが最前列のノミネート俳優をスキャンしていたとき、エド・ハリスが見えました。一瞬目に入っただけだけど、たしか腕を組んで、表情も変えずに、静かに壇上の老人を目で射るような表情に見えました。振り向いて、後ろでどのくらいの参加者がスタンディングしているか、確かめる気もないように。

私の見間違いだったかなあ、カメラも一瞬だからその後があったかも、と思っていたけど、ロイターの伝えるところでは、抗議の姿勢を示したノミネート俳優の一人として、はっきり名指しされていましたね。テレビでは立ち上がった人がかなり目立ったけど、「実際は二割ほどだった」とも付け加えていました。さすがはロイターというところですね。スピルバーグは立ち上がらず、拍手だけしたとか。

べつに私、踏み絵遊びをしているんじゃないんです。エリア・カザンが名誉賞に値するかどうか、それについて誰がどういう態度を表すか、詮索しているんじゃない。そうではなくて、50年代という昔のことなのに、それを忘れないでいるハリウッドの人たちのすごさを見た気がしました。ハリウッド映画というと、金にまかせて大作を作っていると思われがちだけど、実際はこういう俳優、監督、ほか大勢の映画人がいるからこそ、いい映画ができて、それが文化にまで高められているんでしょうね。

ほかにもっとたくさん沈黙の抗議をした参加者がいたのに、なんでエド・ハリスだけ取り上げるのか、って? はい、動機は単純で、彼が私の尊敬する俳優さんだから。映画を見た人はお分かりのように、この間とりあげた「THE ABYSS」の主演をしています。この映画の演技で私はすっかり彼のファンになってしまった。そして今また、「忘れないこと」を教えられてしまいました。

追記: テレビで授賞式の再放送を見ていたら、エド・ハリスは腕組みしてはいなかったけど、両手をひざの上に重ねていましたね。それと、ホスト役のウーピー・ゴールドバークの演技と進行が絶品でしたが、これは受賞結果だけを報道する新聞などでは、触れられていないことでした。アカデミー賞にかんしては、Yahoo! JAPAN にアカデミー賞特集があります。(99.3.28)





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