(キーワードのコーナー)
■地方分権一括法
「自治体」は変革の真っ只中です。以下「キーワード」の把握を通じて、「自治体」マーケットの市場理解に繋げて頂ければ幸いです。
尚、ご多忙の方は末尾の【自治体市場理解のための全体解説】を通読し、必要に応じて【キーワード解説】を参照下さい。
(注:本資料は2000年6月に小生が首都圏の営業部門への説明用に作成したものです。現時点の最新情報を保障するものではありません。)
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◆ 【キーワード解説】
1.「地方分権」(「地方分権一括法」の施行:「地方分権一括法」とは、地方分権を推進するため、475本の法律改正を一 括形式で行うもので、平成12年の4月から施行されています。そのポイントは次のとおりです。)(http://www.mha.go.jp/news/990406-2.html)
(1)機関委任事務制度の廃止
機関委任事務制度とは、知事や市町村長を国の「地方出先機関」とみなして、自治体に事務を行わせる制度です。機関委任事務は、県の許認可等の事務の7〜8割に及び、責任の所在がはっきりしない点があるとともに、国が包括的な指揮監督権を持つことで、国と県・市町村があたかも上下関係にあるかのような印象を与えるなどの問題点が指摘されてきました。
機関委任事務制度は廃止され、これまでの機関委任事務は、一部のものを国が直接執行する事務に変更したうえで、自治体の事務として明確に位置付けられました。そして、これらの事務は、自治体が自らの責任と判断で実施する「自治事務」、国が比較的強い関わりを持つ「法定受託事務」に再構成されることになりました。
(2)関与の見直し
機関委任事務制度を背景に、国から県、県から市町村に対して、指示や許認可、事前協議の義務付けなど様々な「関与」が認められてきました。しかし、こうした関与は、行政の透明性、効率性という点で改善が求められていました。
自治体への関与は、法令に根拠を持たないものは認められなくなり、関与の基本類型や手続が明確にされました。
(3)権限移譲の推進
国と自治体の役割分担が不明確だったこともあり、住民生活に身近な地域の事務でも、国や県が実施しており、事務処理に時間や手間がかかり、非効率的な面がありました。
国から県、県から市町村への権限移譲を推進するとしました。また、県の条例により独自に県から市町村への権限移譲ができる制度が設けられました。
(下記4.中核市、特例市を参照)
(4)必置規制の見直し
自治体に対して特別の名称を持った職員、行政機関や審議会などの附属機関の設置を義務付けることを「必置規制」といいます。必要な職員や機関などは、自治体が地域のニーズに応じて設置すれば足りるのですが、こうした規制があるため効率的な組織運営に支障をきたすことがありました。
自治体の自主組織権を尊重して、必置規制の廃止・緩和を推進するとしました。
2.「地方自治の本旨」
憲法第92〜95条で保障されている地方自治のありようを言います。中身は「住民自治」と「団体自治」です。
住民自治:住民自らが自らの地域のことを考え、自らの手で治めていくこと
団体自治:地域のことは、地方公共団体が自主性・自立性をもって、自らの
判断と責任の下に地域の実情に沿った行政を行っていくこと
3.「行政評価」(『行政評価の時代』: マッキンゼ−上山信一著「NTT出版」)。−グローバルスタンダードと民間手法の視点からの書−より抜粋
行政評価とは,政策評価と執行評価の2種類に分けられる。
(1)「政策評価とは」
政策評価は,まず住民を願客と見立てて,顧客の行政への期待成果を具体項目にリストアップする。そして,それぞれの項目について現状分析をしたうえで,今後めざすべき数値目標を設定する。目標の達成度を毎期ごとにチェックし,その結果を公開し,官民双方が進捗状況を監視していくシステム。
(内容)
顧客(住民)の満足度の向上を目的として,成果(アウトカム)を重視
住民の意見を取り込み,有識者の参画による指標の設定
ベンチマークを用いた継続的なモニタリング
(評価の手法)
首長によるトップダウンにより実施
ベンチマーキング
アウトカムを重視
大規模な自治体(州,市)や国レベル,及び企画・規制・公共事業分野で有効
(2)「執行評価とは」
執行評価は,ごみ収集,水道,道路メンテナンスなど"サービス行政について,活動単位あたりの効率を測り,改善活動を動機づけしていく手法。ただし,この執行評価はコスト改善には有効だが,住民に対する情報伝達という効果は薄い。
(内容)
予算の管理を主目的とし,組織の内部へフィードバック
徹底したコスト効率管理による効率化
職員のボーナスへも反映
(評価の手法)
現場からのボトムアップ
目に見える生産性の向上を重視
小さな州やサービス行政機関で有効(教育,福祉,ごみ収集)
4.「中核市と特例市」(1.(3)権限委譲の観点から中核市の要件緩和、特例市制度の創設がなされました)
■中核市…首都圏では八王子市と横須賀市の2市。
第1 中核市の権能
1. 中核市は、指定都市が処理することができる事務のうち、都道府県が都道府県の区域にわたり一体的に処理することが効率的な事務などを除いたものを処理することができます。
(注)具体的には、福祉、衛生、まちづくり等の事務を処理します。
2. 中核市がその事務を処理するに当たって、都道府県知事の指示その他の命令を受けるものとされている事項の一部については、法令の規定を適用しません。
(注)具体的には、福祉分野について関与の特例が設けられています。
第2 中核市の要件
中核市となるべき市が備えなければならない要件は、次のとおりです。
(1) 人口30万以上
(2) 面積100平方キロメートル以上
・ 中核市の指定を受けている市:27市<全国>(平成12年4月1日現在)
■特例市…首都圏では埼玉県 …川口市、浦和市、大宮市、所沢市、春日部市、上尾市、草加市、越谷 市
千葉県 …市川市、船橋市、柏市、市原市
東京都 …府中市、町田市
神奈川県…平塚市、藤沢市、小田原市、茅ヶ崎市、相模原市、
厚木市、大和市
全国の状況は以下の通りです。(http://www.mha.go.jp/cyukaku/tokurei.htmlより2002.06.29抜粋)
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特例市は、人口20万人以上の市で政令で定める市 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
※人口は、国勢調査人口(平成12年速報値)による |
趣 旨 地方分権推進のためには、できるだけ多くの権限を委譲することが望ましいが、市町村への権限委譲を推進する観点からは、行政ニ−ズが集中し事務処理に必要とされる専門的知識・技術を備えた組織を整備することが可能と思われる市町村から、人口規模に応じてまとめて委譲することが必要であるとの考え方を踏まえ、一定の人口規模を有する市からの申出に基づき指定することにより、権限をまとめて委譲する法制上の措置を講じようとするものである。
1.概要
○ 中核市に権限委譲されている事務のうち、特例市が処理するよりも都道府県が一体的に処理するほうがより効率的な事務を除き、特例市に対しても委譲しようとするものである。
2.要件
○ 人口20万以上であること
3.手続
○ 政令で指定
○ 自治大臣は市からの指定を求める申出(都道府県の同意、関係議会の議決が必要)を経て、政令の立案を行う。
4.委譲される権限
○ 次の16法律20項目の権限が委譲される。
(1) 騒音を規制する地域の指定、規制基準の設定、関係行政機関の長への協力要請等(騒音規制法関係)
(2) 悪臭原因物の排出を規制する地域の指定、規制基準の設定、公示、周辺市町村長の意見聴取、関係行政機関の長への協力要請等(悪臭防止法関係)
(3) 振動を規制する地域の指定、規制基準の設定、関係行政機関の長への協力要請等(振動規制法関係)
(4) 指定物質排出者に対する指導、助言及び勧告、報告徴収(瀬戸内海環境保全特別措置法関係)
(5) 特定施設の設置の届出等の受理、計画変更命令等、常時監視、公表、報告徴収、立入検査等(水質汚濁防止法関係)
(6) 計量法に基づく勧告、定期検査等(計量法関係)
(7) 汚水等排出施設を設置している工場に係る特定事業者が公害防止統括者を選任したとき等の届出の受理等(特定工場における公害防止組織の整備に関する法律関係)
(8) 都市計画の決定又は変更にあたっての土地の試掘等の許可等(都市計画法関係)
(9) 開発行為の許可等(都市計画法関係)
(10) 都市計画施設又は市街地開発事業の区域内における建築の許可(都市計画法関係)
(11) 都市計画事業の施行地区内における建築等の許可(都市計画法関係)
(12) 宅地造成工事規制区域の指定等、宅地造成工事許可等、規制区域内の所有者等への勧告、改善命令等(宅地造成等規制法関係)
(13) 拠点整備区域内における建築行為等の許可等(地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律関係)
(14) 被災市街地復興推進地域内における建築行為等の許可等(被災市街地復興特別措置法関係)
(15) 市街地再開発促進区域内における建築の許可等(都市再開発法関係)
(16) 市街地再開発事業の施行地区内における建築等の許可等(都市再開発法関係)
(17) 土地区画整理事業の施行地区内の建築行為の許可、許可に当たっての施行者に対する意見聴取、原状回復命令、代執行(土地区画整理法関係)
(18) 土地区画整理促進区域及び住宅街区整備促進区域内における建築行為等の許可等(大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法関係)
(19) 住宅地区改良事業の改良地区内における建築等の許可等(住宅地区改良法関係)
(20) 都市計画区域内における路外駐車場管理者からの届出、報告徴収、立入検査等及び駐車場管理者に対する是正命令(駐車場法関係)
5.その他
○ 特例市制度は平成12年4月1日から施行。
◆【自治体市場理解のための全体解説】−文中太字は上記にキーワード解説があります−
地方自治法の改正を受けて地方自治体は、今まさに
@条例の整備(http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/kikakusomu/jyoureisiryou.htm)
A事務事業等の見直し(行政評価による行政改革)
B都県・区市町村関係の見直し(中核市、特例市への権限委譲) 等の推進を始めています。
尚、今回は触れませんでしたが「情報公開条例」の整備が@の中でも大きな柱の一つです。(国の「情報公開法」制定を受けた動き)
「地方自治の本旨」は憲法に保障された住民参加(企業参加)による「住民自治」の実現であり、そのためには情報公開が前提であり、中でも政策形成段階の情報公開が必要であるとの認識が大きな流れとなって来ているところです。
市民(企業市民)の「知る権利」、行政の「説明責任」(アカウンタビリティ)が求められ、原則非公開から原則公開へと行政は歴史的大変革を迎えているというのが大きな流れです。
これはグローバル化、情報化と一体的に動いていると言えます。また「アウトソーシング」により公共事業の民営化が検討されており、「公共」市場の再認識、再定義をしなければならない時代状況となって来ています。
また今回の「特例市」制度の創設が意味するものは、自治体としての適性規模論議から出てきており、今後の合併促進を睨んだもとも言われております。(http://www.mha.go.jp/gapei/gapei4.html )。
私見ですが、地域営業を推進するわれわれにとってはこれらの公共/自治体市場をめぐる背景<タテマエとホンエ>を的確に把握した上で、顧客の経営ニーズ、当社にとっての市場(対応)性を見定めた上で、自主事業化路線を明確かつ確たるものにして行く必要があると考えます。
尚、以下「地方分権の広場」が参考になります。
↓
■PFI
(PFIに関しての約3年前の私的見解文書です。勤務する社内政策決定部門のマネージャーに宛て発信したものです。この見解は現在も変わりませんので敢えて掲載します。制度概要に関しては別途とします。)
PFIに対するの戦略展開に向けて
1.「PFI」に関しての認識について
「PFI」という言葉が取りざたされていますが、以下両面の認識で臨むことが必要。
(1)PFI的手法は従来からあるし、実際に事業化されてきている。したがって、事業手法の一つであるという理解が必要。それを「法的に担保しようという動きになってきている」という軽い認識。
「→もし必要であれば、従来手法まとめます。…言って下さい」
(2)一方で、「公共」という概念の再定義を余儀なくされ、市場の見直し、営業体制、評価制度の見直しにまで発展する可能性を秘めており、地域戦略のリストラクチャリング(地域というものをどう認識し、営業推進するかの検討)、換言すれば、「国内販売事業のコアコンピタンスをどこに求め、追求、構築していくか」の重たい戦略課題であるとの認識。
「→周知のとおり議論中です。アウトソーシング進展すれば公・民がボーダレスになる。」
※良く議論してきましたように、「地域情報化・地域開発」案件に対する戦略がないところが問題。
手法・方法への対応ではなく、案件そのものへどう取り組むかの戦略ありきで臨むべき。
2.利害関係者の目的とするところの把握
法的に担保しようという動きに立場立場の利害関係者が群がり、それぞれの思惑をもち有利に展開しようとしている。以下が考えられるが一層の実態把握が必要。
■利害及び価値観により目的さまざま
1)財政硬直化の現状打破(財源確保)
2)天下り確保
3)新産業創出
3.戦略的スタンス確立に向けて
事業となると採算性が問われるわけで、建前論では欧米的「PFI」には賛成するも、日本的PFIは上記の思惑により変形・変質する可能性がある。
PFI推進法案がどうなるのか、かつ地方分権の実体、特に税配分の見直し等実質的な地方分権がどう形成されるのか、不透明な中、また相も変わらぬ中央行政の裁量権行使という構図が引き続く不安要素も拭い切れず、本音部分ではその事業成立性には懐疑的であり、趨勢静観というのが実態ではないか?(推測)
あるいは某社のように積極的に参画のスタンスをとりながら実際はサット引くというシタタカな戦略で臨むところも出てくる事が予測され、当社としてどのような戦略で臨むか戦略的スタンスがまず必要。
・戦略的スタンス確立のために、冒頭の認識の元、実態把握(仮説含め、仮説は検証必要)が必要。
・この「実態把握→仮説→検証→戦略展開」を誰が、いつまでに、どのようにやるのかいわゆる5W1Hの確立から始める必要がある。
■中心市街地活性化
(中心市街地活性化推進室のホームページより以下抜粋)
中心市街地の活性化に取り組む市町村などを強力に支援するため、平成10年7月に「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律(略称:中心市街地整備改善活性化法)」が施行され、また、関係府省庁による支援体制の整備も進んでいます。
1.中心市街地整備改善活性化法の概要
[条文はこちら]
@法律の特徴
ア.市町村の役割の重視
それぞれの地域の特色や、地域の住民、商業者などの意向を十分に反映するため、地域にとって身近な市町村の役割を重視しています。
イ.市街地の整備改善と商業等の活性化の一体的推進 市街地の整備改善に関する事業と商業等の活性化に関する事業を車の両輪として、民間活力の活用を図りながら、ハード・ソフトにわたる各種施策を総合的かつ一体的に推進します。
A法律の基本的な仕組み
ア.国の基本方針の作成
イ.市町村による基本計画の作成 市町村は、国の基本方針などをふまえ、一定の条件を満たす区域を「中心市街地」として定めるとともに※、中心市街地の活性化のための方針や目標、実施する事業に関する基本的な事項等を内容とする「基本計画」を作成します。[法律の関係条文へ]
※中心市街地として定めることができるのは、次のような条件を満たす区域です。ア)相当数の小売商業者や都市機能が集積し、市町村の中心としての役割を果たしていること
イ)土地利用、商業活動等の状況・動向からみて、機能的な都市活動の確保や経済活力の維持に支障を生じ、又は生じるおそれがあること
ウ)中心市街地における事業の一体的推進が、当該市町村及びその周辺地域の発展に有効かつ適切であると認められること
※なお、このような条件を満たす中心市街地は、合併市などの例外を除けば、一般的には一つの市町村に一つと考えられます。また、中心市街地の面積に特に制限はありませんが、土地利用や機能集積の実態、想定される事業の範囲などを考慮して、適切な規模の区域とすることが必要です。
(基本方針の関係部分へ)
ウ.基本計画に基づく事業の実施
市町村、民間事業者等は、「基本計画」に基づいて、土地区画整理事業、市街地再開発事業、道路、駐車場、公園等の都市基盤施設整備など「市街地の整備改善に関する事業」、魅力ある商業集積の形成、都市型新事業の立地促進など「商業等の活性化に関する事業」、その他必要に応じて公共交通の利便性向上、電気通信の高度化等に関する事業等を一体的に推進します。
▼中心市街地整備改善活性化法の仕組み
◇中部地区の状況は地区の発信コーナーへどうぞ
■都市再生
都市再生本部は、「環境、防災、国際化等の観点から都市の再生を目指す21世紀型都市再生プロジェクトの推進や土地の有効利用等都市の再生に関する施策を総合的かつ強力に推進する」ことを目的として、平成13年5月8日、内閣に設置されました。