ヘリオブルー
レディッシュ
21
どどどどうしてキョウがここにっ……!?
カチ、カチ、カチ…。
時計の音が、妙に耳に触れる。
生一は、突然現れた共一をとりあえず部屋に招き入れ、テーブルの角をはさんで斜めに向かい合う形で座っていた。
「キョ…キョウ…、学校は…?」
何か話さなくては…っと、無難な質問を投げかけてみるが…。
「ああ…。気にするな」
……会話が続かない。
用があるから来たのであろうはずの共一は、なぜかずっと黙ったままで、まして生一は、昨日の事もあり、完全に萎縮してしまっている。場の空気を和ませるような話題を思いつく訳もなく、何を話して良いのかわからない。それどころか、どんな顔をして良いのかもわからない。
昨日あんなに怒っていた共一が、突然目の前に現れ、その表情には昨日の怒りは微塵も感じさせない…。もしかしたら、もう二度と声をかけてもらえる事もないのかも知れない、とすら思っていた生一としては、嬉しさよりも、困惑と新たな不安の方が勝っていた。
「…寝てなくて大丈夫なのか?」
生一の中で、もしかしたらハッキリと絶縁宣言をしに来たのではないか…。などという不安が頭をもたげはじめた時、沈黙を破って、共一が静かに言葉を発した。
「えっ…?」
「……あいつ…、久堂に、お前が具合悪くて寝込んでると言われた」
「蘭ちゃんが……?」
なるほど、それで様子を見に来てくれたらしい。…でも、どうして?
昨日の今日で、共一が生一の事を心配してくれるなどと、生一には到底思えなかった。
わからない。何をどう感じていいのかも、わからない。
共一が何を考えているのか、わからない…。