ヘリオブルー
レディッシュ

22


「俺のせいか……」

 再び居心地の悪い沈黙が流れた後、共一の口から、呟くようにポツリと言葉がもれた。
「え……」
「体調悪いの、俺のせいか…?」
「なっ、なんで!?違うよっ」
 予想もしていなかった共一の言葉に、慌てて首を振る。

「だってお前、昔から何か嫌な事があると、熱出したりゲロ吐いたりしてただろ」
「っ…、ゲ…ゲロって……っっ」
 確かにそんな事もあったな…。と思い出し、反論する事もできず、生一の頬がピンク色に染まった。

フゥッ

 共一が、何かを振り切るように、勢いよく肺にためた空気を吐き出した。
「とりあえず聞け」
 その言葉に、生一は無言で頷く。
「お前は大きな誤解をしている」
「誤解…?」
 共一は大きく頷くと、話を続けた。
「まず、俺と遙は恋人なんかじゃない」
「えっ…?」
 テーブルの角を見つめていた生一は、驚いて共一を見上げた。

「なにかオカシな噂を聞いたらしいが、そんな事は絶対に有り得ない話だっ。俺は間違ってもあいつにだけは惚れない!」
 どうやら、嘘を言っている訳ではなさそうな共一の剣幕に圧され、生一はうん、うん、と無言で二回頷いた。
「それから…。これはお前も、もう気が付いてると思うが…、遙は見かけ通りの優しい人間じゃない。………俺は、お前にはあの手の人間を近付けたくない。『遙に近付くな』と言ったのはそういう意味だ。他意はない」

「キョウ………」

 それは、生一の事を思って…、という風に受け取っていいのだろうか…。
「あいつの事だから、この先もおもしろがってちょっかいを出してくるだろうが、俺や久堂がいない所では、遙と関わるな。いいか?」
「うん……」
 生一の目に、熱いものが込み上げる。
 嫌われてはいなかった…。それどころか、こんなにも生一の事を考え、心配してくれるなんて……。

「それと……」
 共一は、瞳を潤ませている生一を、チラリと横目で流し見た。

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