You are my
reason to
be… 2

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「うううぅ〜……」
 屋上の片隅、周りからは死角になる場所で、隅っこにスッポリとはまり込むようにして慶介の後輩、七瀬幸冶(ゆきや)が泣いていた。
 その横では七瀬の友人、秋本が必死で七瀬を慰めている。

「しょうがないよ、七瀬……。いくら七瀬でも、西原先輩には敵わないよ」

(色んな意味で……;)

「グスッ…、別に、取り合う程の人じゃないし…。もうどうでもいい…。もう好きじゃないっ……」

(じゃあ何で泣いてんだよ;)

 衝撃の事実が余程ショックだったのか、ぐしゃぐしゃの泣き顔で強がりを言う七瀬の姿に、呆れながらも可哀想で放っておけない。
 七瀬が、中学時代からどれ程慶介を好きだったか、七瀬をずっと友人として近くで見てきた秋本は、よく知っていた。

「ふぅん…、そうなんだ」
「!!」
「西原先輩……っ」
 突然の声に振り向くと、先程、衝撃発言をした張本人の出流が、無表情で立っていた。
 その表情から、何を考えているのかは読み取れないが、今しがたの七瀬の強がりは、きっと聞かれていただろう。

「とりあえず、あきらめてくれるんなら安心したよ。じゃあな」
 それだけ言うと、出流は二人に背を向けた。

「西原先輩っ!」
 追いかけて来た秋本に呼び止められ、足を止める。

「違うんです、…あいつ、ああ見えて、こう……意地っ張りっていうか、ひねくれてるっていうか……」

「わかってる」
 出流は、必死な様子の秋本に、クスッと笑って言った。

「意地っ張りでひねくれてるのは俺も同じだから、わかってるよ」
「西原先輩……」

「あ、そだ」
 突然、思い出したように声を漏らすと、七瀬の元へと歩き出した出流を、秋本も慌てて追いかけた。

 七瀬の目の前に片膝をついてしゃがんだ出流は、驚く七瀬の顎を片手で上げると、ためらう事無く唇を重ねた。

「「!!」」

「慶介のキスは全部俺のものだから、返してもらうな」
 呆然とする二人を残し、出流はしてやったり≠ニいう笑顔で去って行った。



 残された二人の間には暫く沈黙が続いたが、秋本が七瀬に視線を向けると、頬を染めた七瀬がポツリと呟いた。

「西原先輩も……、イイかも///」
「え!?」







「てゆーかさぁ、出流ちゃん……」
「ん?何、椎名」

「これで一年生の間でも公認になったね」

 ・

 ・

 ・

「……し、しまったー―――!!」



 放課後の静かな校舎に、椎名の笑い声と出流の叫びが響いた。

◆END◆


……なんか、出流がだんだんアホな子に…;
おかしいな…;
でも、漫画版で可哀想な役回りをさせてしまったので、ハジケたキャラになってくれて、なんか嬉しかったり…*
慶介は苦労しそうですが、頑張ってもらいましょう。
椎名関係の話を組み込もうと思っていたんですけど、上手く入れられなかったので、そちらは次回へ持ち越しに。あと、后とか二階堂とか、まだ名前も出てないキャラとか……。ああぁ…、何から書こう;

2006.7.15 途倉幹久


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