ヘリオブルーレディッシュ

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「せいちゃん、今日も可愛かったわ〜

 久堂蘭丸は風呂あがりの濡れ髪のままで、生徒手帳の中の生一の写真(どこで手に入れた

のか…)にチュッとキスした。

(はあ〜、可愛い〜〜。私の心のオ・ア・シ・スッ…)

 写真の中の生一にうっとりと目を細めたその時、ピンポーンと部屋のインターホンが鳴った。

「は〜い!」

 時刻は7時を回っている。こんな時間に誰だろうかと思いつつも、蘭丸は相手を確認するため

受話器を取った。









「せいちゃんほら、早く入って。…こんなに冷えてっ……」

 インターホンの画面に映っている生一を見た蘭丸は、嬉々としてマンションのエントランスまで

彼を迎えに行ったが、目の当たりにした生一の姿に息をのんだ。

 泣きはらした目には今もまだ薄っすらと涙が光り、いつから外を歩いていたのか、寒そうに

身を震わせる身体…。明らかに何かがあったであろう事を予感させるその姿に、蘭丸は慌てて

部屋まで連れてきたが、室内に上げようとしたところで立ち止まってしまった生一に、冷え切っ

た肩を抱いて促した。

「………、」

 そして、一度申し訳なさそうに蘭丸を見て、意を決して靴下を脱ぎ始めた生一に驚く。

「せいちゃん…、あなた、靴は…?」

「……ん、…忘れて…きちゃった」

 一体いつから、どれだけの距離を歩いていたのか、足の裏が真っ黒になった靴下…。



「………っ、とにかく今は身体を温めるのが先ね。ほら、さっさとシャワー浴びてきなさいっ。

いーい?しっかり温まってから出てくるのよ?わかった?」

「うん…」

 わざと明るく振舞う蘭丸に圧され、生一にも少しだけ笑顔が戻った。



 ありがとう、蘭ちゃん…。



 バスルームへと消えた生一の後姿を、蘭丸の複雑な視線が見つめていた。




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