ヘリオブルーレディッシュ

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「お前、昨日は久堂のところに泊まったんだって?」

「え…?う、うん……」

 共一を見ると、真直ぐな視線と目が合った。
                                     そうまとう      よぎ
 探るような鋭い目に見つめられ、昨夜の蘭丸との出来事が走馬灯のように過る。生一は

蘭丸と一線を越えそうになった事を思い出し、その顔をみるみる赤く染めた。

 そんな生一の様子を見た共一は、ピクリと眉間にしわを寄せる。

「どこまでされた」

「え!?」
                                             は
 何事かされたであろう事は、確信済みのような物言いに、生一の心臓が跳ねる。

「な、な、何……っ?」

「最後までか」

「ちっ、違うよ!!」

 生一は真っ赤になって叫んだ。

 しかしこれでは、何かしらはされたと言っている様なものである。

「…………」

 詰め寄る様に無言で見つめられ、居たたまれなさに生一は おずおずと口を開いた。

「キ…、キス…だけ……」

 正確には、上半身を中心に身体中にキスされたのだが、さすがにその辺は伏せておく。

「…………」

「…キョウ……?」

「クソッ…!」

 無言のままの共一を、恐る々々覗き込むと、突然強い力で抱き寄せられた。

 生一は一瞬、何が起こったのか分からなかった。目の前には共一の制服の胸元が見え、

頬には温かい感触が触れている…。

「なに…他人に触らせてんだ」

「え……」

 小さく耳元で囁かれた声に、問い返す。

「お前は俺のものだろ。…気安く他人に触らせるな」



 え………



 共一は、生一を抱きしめる腕に力を込めた。

 勝手な事を言っているのは、わかっている。自分から突き放しておいて、今更自分のもの

だなんて、こんな勝手な物言いもないだろう。

 しかし、蘭丸に言われたセリフで頭が冷えた。



「誰かに許してもらえなきゃ、人を好きになる事もできないの?」




 本当はずっと好きだった…。
               とも
 この世に同時に生命を灯し、そしていつも懸命に自分の後を追いかけて来る小さな存在を、

誰よりも愛していた。

 それを許さなかったのは、周りよりも、むしろ自分自身で…。



「キョウ……」

 生一は、共一の腕の中で顔を上げた。

 見上げると、なぜか共一が泣き出しそうな瞳で自分を見下ろしていた。

「キョウ…、ごめんね?僕、キョウのものだよ。…もう、誰にも触らせないから……」

 だから、そんな顔しないで…―――


                                                 みじろ
 生一はゆっくりと差し上げた右手で、共一の頬を流れ落ちる涙を撫でると、軽く身動ぎをして

首を伸ばし、自分から優しく唇を重ねた。




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