―― 寂しそうで たまらなかった
一生懸命虚勢をはってて ほっとけなくて
…自分と似てて……… ――
「慶介、この人があなたの新しいお父さんになる人よ」 「よろしく、慶介君」 『父さん』… この人は『父さん』だけど『他人』で、そして 「よろしく」 俺の『敵』…
4つ下の妹は、わりと早く『父さん』になついた。 小さかったし、女の子だから かお いだ
ただ 3人で暮らしていた頃には見た事もないような 幸せそうな母さんを見るのは
嬉しいよりも 悔しくて
…寂しかった かみや 私立華宮高等学校。 きさきなおや 前理事長の孫である后尚也が現在の理事長を務める男子校。そこに隣接する寮の掲示 しむらけいすけ 板で、志村慶介は自分に割り当てられた部屋番号と同室者の名前を確認していた。 ここ華宮の寮では、1年生は4人部屋、2年生になると自分達の意見を反映した相手との 2人部屋となり、3年生は1人部屋という制度になっている。 慶介は1年生なので、4人部屋だ。 (知ってる名前は居ないな…) 同室者に知り合いは居なかったが、仕方がない。同じ中学校からの入学者達は、家から 通うのがほとんどだったのだ。慶介自身も、けして家から通えない距離ではなかったのだ が…。 「あ…」 慶介が掲示板で確認した部屋のドアノブに手を伸ばしたところ、横から思わず出たような つぶや 呟きが聞こえた。 声のした方向に視線を向けると、少し眠そうな表情の美しい少年がこちらを見つめて いる。身長は標準よりも高めだが、全体的に華奢な印象の、中性的な少年だった。。 「ああ、同室…か?」 「…、ああ」 相手の短い返事を確認し、部屋のドアを開けると、既に二人の姿があり、そのうちの一人 ほころ が、慶介の隣の少年を見て顔を綻ばせた。 「おっ、西原ー」 「タカ…。同室だったんだ…」 どうやら二人は知り合いなようだが、西原と呼ばれた少年は同室者の名前を確認せずに 来たらしく、驚いた顔をしている。意外とヌケているのか、興味がないのか…。 「とりあえず まあ、ありきたりに自己紹介といきますか」 いつもの事なのか、タカと呼ばれた少年は、さして気にしたふうもなく立ち上がった。 ひだかたかとし のいわ 「俺は日高孝利。野巌中出身。よろしくっ」 日高にうながされ、彼はやはり眠そうなまま口を開いた。 にしはらいづる 「えっ、ああ…、西原出流。同じく野巌中」 いとう まさし よこかわ 「俺は伊藤正。横川中」 すなはら 「志村慶介。砂原中だ」 「え?砂原中?砂原中って、すぐそこじゃん。何でわざわざ寮に入ったんだ?家遠いの?」 「うーん、まあ、寮の方が気楽だからな」 「ふーん、そんなもん?」 不思議そうに尋ねてくる日高に、曖昧に答える慶介の様子を、出流が静かに見つめてい た。 (俺と同類か…) 家に居たくない…。それは出流にも良く分かる感情だった。
この時は |