「うううぅ〜……」
     かたすみ                   すみ           は
 屋上の片隅、周りからは死角になる場所で、隅っこにスッポリと嵌まり込むようにして慶介
        ゆきや
の後輩、七瀬幸冶が泣いていた。
                             なぐさ
 その横では七瀬の友人、秋本が必死で七瀬を慰めている。



「しょうがないよ、七瀬……。いくら七瀬でも、西原先輩には敵わないよ」

(色んな意味で……;)



「グスッ…、別に、取り合う程の人じゃないし…。もうどうでもいい…。

 もう好きじゃないっ……」

(じゃあ何で泣いてんだよ;)
          よほど
 衝撃の事実が余程ショックだったのか、ぐしゃぐしゃの泣き顔で強がりを言う七瀬の姿

に、呆れながらも可哀想で放っておけない。

 七瀬が、中学時代からどれ程慶介を好きだったか、七瀬をずっと友人として近くで見て

きた秋本は、よく知っていた。



「ふぅん…、そうなんだ」

「!!」

「西原先輩……っ」
                                   いづる
 突然の声に振り向くと、先程、衝撃発言をした張本人の出流が、無表情で立っていた。

 その表情から、何を考えているのかは読み取れないが、今しがたの七瀬の強がりは、

きっと聞かれていただろう。


       あきら
「とりあえず諦めてくれるんなら、安心したよ。じゃあな」

 それだけ言うと、出流は二人に背を向けた。



「西原先輩っ!」

 追いかけて来た秋本に呼び止められ、足を止める。
                                          ひね
「違うんです、…あいつ、ああ見えて、こう……意地っ張りっていうか、捻くれてるって

いうか……」

「わかってる」

 出流は、必死な様子の秋本に、クスッと笑って言った。

「意地っ張りで捻くれてるのは俺も同じだから、わかってるよ」

「西原先輩……」



「あ、そだ」
                  
 突然、思い出したように声を漏らすと、七瀬の元へと歩き出した出流を、秋本も慌てて

追いかけた。


             ひざ                        あご
 七瀬の目の前に片膝をついてしゃがんだ出流は、驚く七瀬の顎を片手で上げると、
ためら
躊躇う事無く唇を重ねた。

「「!!」」

「慶介のキスは全部俺のものだから、返してもらうな」

 呆然とする二人を残し、出流はしてやったり≠ニいう笑顔で去って行った。




               しばら
 残された二人の間には暫く沈黙が続いたが、秋本が七瀬に視線を向けると、頬を染めた
         つぶや
七瀬がポツリと呟いた。

「西原先輩も……、イイかも///」

「え!?」

















「てゆーかさぁ、出流ちゃん……」

「ん?何、椎名」



「これで一年生の間でも公認になったね」



 ・

 ・

 ・



「……し、しまったー―――!!





 放課後の静かな校舎に、椎名の笑い声と出流の叫びが響いた。








◆END◆



……なんか、出流がだんだんアホな子に…;
おかしいな…;

でも、漫画版で可哀想な役回りをさせてしまったので、ハジケたキャラになってくれて、なんか嬉しかったり…*
慶介は苦労しそうですが、頑張ってもらいましょう。
椎名関係の話を組み込もうと思っていたんですけど、上手く入れられなかったので、そちらは次回へ持ち越しに。あと、后とか二階堂とか、まだ名前も出てないキャラとか……。ああぁ…、何から書こう;


2006.7.15

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