また
 午前0時。とうとう日付を跨いでしまった。いくらなんでも遅すぎる。



 もしかしたら本当に、慶介に何かあったんじゃないだろうか?とっくに七瀬とは別れて
                   
おり、その後一人で事故にでも遭っていたとしたら……。携帯電話はここに在る。何か

他に、身元のわかるような物を持って行ったのだろうか……?



「どうしよう……。慶介っ……」
              いづる     こぼ
 強い不安に襲われた出流は、もう零れ落ちる涙を止めることは出来なかった。


                                             しょざい
 テレビを点け、ニュースの事故情報を確認しながら、ウロウロと部屋の中を所在無く

歩き回る。



 どうしたらいいのだろう?寮長に相談した方が良いのだろうか?
                     つ  ぐち
 しかし、事故じゃなかった場合、告げ口をするようなかたちになってしまう……。



 もう……、慶介っ、頼むから早く帰ってきて……!









 真夜中、慶介は寝苦しさに目を覚ました。

「……ん、?…出流?」

「………。誰ですか?いづるって…」

「え?」

 目を開けると、何故かベッドで寝ていた筈の七瀬が慶介の布団の中に入り、慶介に覆い

被さるように乗っていた。
                                がてん
 七瀬は「あ、確か慶介先輩と寮が同室の……」と、合点がいった顔をしたが、上から退け

る様子はない。



「……っど、どうしたんだ?」

「どうしたって……。こんなチャンスなのに、先輩なにもしてくれないんだもん…。僕が体調

崩してるから遠慮してるんですか?…こんなのよくある事なんですから、気にしなくていいん

ですよ?」



「なっ……?」

 驚きのあまり言葉に詰まる慶介に、七瀬は更に熱っぽい微笑みで続けた。

「でも、そういう優しいとこ……好きです」



「………え?」
                またた
 慶介は、目をパチパチと瞬かせた。

「……え…って、…気付いてなかったんですか……?」



 七瀬はどうやら、慶介の鈍さを甘く見ていたようだ。


     ほう
 一瞬呆けた七瀬だったが、慶介の頬を両手で包むと、いつもの弱々しい彼ではなく、強い

瞳で言った。

「好きです。ずっと好きでした。僕を慶介先輩のものにして下さい…」



 七瀬は、慶介の唇に、ゆっくりと自分の唇を重ねた。




















                                    かす
 部屋の中では、放送時間を過ぎたテレビの砂嵐の音と、微かなすすり泣きが響いて

いた。



「慶介……っ」


               くる
 出流が、慶介の布団に包まり、声を殺して泣いていた。




慶介……



俺を独りにしないでよっ……






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You are my reason to be… 2