ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その１６

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

二

ⅲ

「あなたまだ若くて可愛いのに、

何かつらいことでもあったんでしょう？

いいえ、いいの。若い頃ってそうよね。私にも覚えがあるわ」

「は、はあ。確かに日常がつらくないって言ったら嘘になるような？

って、そうじゃなくてですね！

種ですよ、種を植えませんでしたか？」

「種？　お花ならたくさん植えてるけど。

あなたもガーデニングに興味があるの。

なんだ、それならそうと言ってよー」

　どうやら彼女は強盗でもなんでもなく、律子が手塩にかけて

育てている花たちに惹かれてきただけの人物だったらしい。

（もう紛らわしいわね。

あんなの振り回されたら誰だって強盗だって思うじゃない）

　いつも勝手な妄想をして他者に迷惑をかけてしまう律子だが、

今回は違うはずだと心の中でぼやいた。

「え？　ガーデニング？　あ、は、はい！　そうなんですよー！

こちらのお庭がとってもいい香りがするものですから、つい……」

「そうでしょう。私の可愛いお花ちゃんたちですもの。

あっ、せっかくだから中に入って近くで見てやって」

　褒められるとついつい頬が緩んでしまう。

律子は先ほどの恐怖などすっかり忘れ、女性を招き入れた。

「そ、そうですか？　じゃあお言葉に甘えて……」

　ここ最近花に興味を持ったお客がいなくて

自慢の庭を見せていなかったから丁度いい。

彼女にもガーデンニングの素晴らしさを教えてあげなくては。

律子は使命感に燃えながら女性が庭へ入ってくるのを待った。

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