ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その６９

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

五

ⅱ

　何か言わなければ、と混乱する頭で考え俯いたまま男性へ問う。

「あ、あのー狼さん？　でいいんでしょうか？」

　ためらいぎみに視線を上向けると、男性がまばたきをした。

「？　ああ、名前か？　満（みつる）だ。狼谷（かみや）満」

　あっけらかんと答えてくる満に、麻里はほっと胸をなでおろす。

「麻里です。小越（こごし）麻里。よろしくお願いしますね」

「ああ」

　笑顔で満を見やると、満がなぜかそっぽを向いた。

暑いのだろうか。顔がほんのり赤い気がした。

気になって満に手を伸ばすその前に、律子が立ちはだかる。

「興味ないかもしれないけど、私は野木崎律子よ」

どんとこちらの中へ割りこんで仁王立ちしてきた。

「あ、ああ」

　戸惑った様子で頷く満を見て、麻里はふと思いたつ。

やはり悪い人ではなさそうだし、

この際手伝ってはもらえないだろうか。

麻里は決意して改めて満の前へ立った。

「あ、あの、会ったばかりで申し訳ないんですけど、

これからどこへ行ってどうすればいいか全然わからなくって。

もしご存じでしたら教えていただけませんか？」

　なるべく丁寧に尋ねてみたのだが、

なぜか満が一歩後ろへ退いてしまう。

何かまずいことでも言っただろうか。

麻里は目をまたたかせて満へ一歩寄った。

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