ＧＰ２～太一＆麻里の場合～その１６５

Gold Plum

第二章

交錯

～太一＆麻里の場合～

六

ⅹⅹⅰ

「それなら丁度いいべ。

太一君、わしらが『わさび谷』へ行くから

お兄さんとやらにはそこで待ってるように伝えてくれだべ」

「わかった。……

もしもしお兄ちゃん。今からそっちに向かうから、

お兄ちゃんたちはそこにいてだって」

　邦夫からの提案を伝言ゲームのように涼介へ伝えると、

微かに息を吸い込む音が聞こえてきた。

どうやら予想外の返答だったらしい。

ためらいがちに訊いてきた涼介の言葉を、

太一は邦夫へ告げる。

「リオのおじいちゃん。

お兄ちゃんがいいのかって聞いてるよ」

「問題ないべ。

そこらへんは獣人の地区と人間の地区の境だべ。

ここより目立たないから都合がいいべ」

　なるほど。獣人が住んでいる地区と

人間が住んでいる地区の境にあるのならば、

自分が知らないのも当然だ。

そういうところへ立ち入ってはいけないと、

小さな頃から幾度となく聞かされ続けていた。

（でもなんでお兄ちゃんたちは

そんなところにいるんだろう？）

　デートならばもっと相応しい場所があっただろうに。

太一は内心で首を捻りながら、

涼介に会ったらデートの邪魔をしてしまったことを謝ろうと

心の中で誓った。

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