ＧＰ２～太一＆麻里の場合～その４６

Gold Plum

第二章

交錯

～太一＆麻里の場合～

二

ⅹⅶ

　一瞬にして白い湯気が部屋を充満した。

花火をしたときに襲いかかってくる煙から逃れようと、

顔を背けるときによく似ている。次第に楽しくなってきた。

「わぁー！　真っ白だ。

お姉さん、すごいね。すごい。何にも見えないよ。アハハハ」

　隣にいるはずの麻里の姿すら判別できない。

太一は麻里の存在を確かめようと手を上下に揺すりながら伸ばす。

しかし、白い蒸気が漂うだけで麻里に触れることはできなかった。

「本当。まったく何も見えないわ。

でもそれだけって感じだけど……」

　ふいに聞こえてきた困惑気味の麻里の声に、太一は我に返る。

（遊んでる場合じゃなかったんだった……）

　想像以上の湯気にはしゃぎすぎてしまった。

太一は麻里にわからないよう姿勢を正し、取り繕う。

「そうだよねー？　あっ、何か聞こえたりするお姉さん？」

「え？　いいえ、何も聞こえないけど……」

　彼女からもこちらの姿は見えていないようだ。

麻里は誤魔化しを気にした様子もなく応えてくる。

だが、そちらのほうが問題だった。

何も反応がないのはまずい。太一は嫌な予感に胸がざわつかせた。

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