ＧＰ２～善郎＆律子の場合～その２９

Gold Plum

第二章

交錯

～善郎＆律子の場合～

二

ⅹⅷ

（長居は無用だわ。早く逃げなくっちゃ）

　律子は怒った振りで青年からバッグを奪い取った。

「ちょっと人のものを勝手に見ないでください！」

　あとはそのままこの場から立ち去ればいいだけだ。

しかし、長髪の男性が逃がすものかと言わんばかりに

こちらの行く手を阻んでくる。

「あんた。これをどこでみつけたんだ？」

「ど、どこだっていいじゃないですか。

あ、あなたたちには関係のないことでしょう」

　言葉に詰まりながらもなんとか答える。

口から心臓が出てきそうだ。

律子は早鐘のように脈打つ胸元へ、バッグをぎゅっと抱え込んだ。

「それがそういうわけにもいかないんですよ。

ええっと、あの、失礼ですがお名前は？」

　眉を下げ、困りきった表情で携帯電話を取り出しながら

青年が尋ねくる。

（私が氷を割ったってもうバレたの？　

どどどしたらいいのかしら？）

　ここは素直に謝罪して許して貰ったほうがいいのだろうか。

だが、それだとせっかく実らせた石を没収されるかもしれない。

そんなことをされてしまったら黄金梅を実らせることが

できなくなってしまう。

　律子が悶々と思い悩んでいると、

ウグイスのような茶緑色をした短い髪の老女が

朗らかな笑みを向け会釈してきた。

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