ＧＰ２～善郎＆律子の場合～その９

Gold Plum

第二章

交錯

～善郎＆律子の場合～

一

ⅸ

「これって氷室？　扉があるってことは中に入れるのかしら？」

　律子はおずおずと扉へ手を伸ばす。

思った以上に簡単に持ち上がった扉に驚きながらも扉をどけ、

真っ暗闇の内部へ足を踏み入れる。

律子はジーンズの裾から入り込むひんやりとした空気に身震いした。

「うー、真っ暗で何も見えないわ。ええっと、ライト、ライト」

　怖じ気づきそうになるのを大きな独り言で誤魔化しながらも律子は、

カバンの中を漁る。

取り出した自転車用の取り付けライトの電源をオンにすると

なんとなく室内が把握できた。

　大人２、３人が入れば窮屈になりそうな広さの奧に、

藁で覆われた四角いものがある。

「そういえば、雪姫様が作った氷が奉納されてるのよね？

この中に入ってるのかしら？」

　律子は前方をライトで照らしながら近づき、

上に乗せてある藁をどかす。

藁の下から木製の蓋のようなものが出てきた。

「なんだか悪いことしてるみたい」

　よそ様のうちを勝手に触っているような気分に、

罪悪感がこみあげてくる。

「雪姫様ごめんなさい。でも黄金梅を咲かせるためだから許して」

　意を決して蓋を開けると、

藁と氷が敷き詰められている中央にソフトボール大の氷の球が見えた。

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