Gold Plum
第三章
救出
〜涼介&みのりの場合〜
四
IIC
(違うの、あんなことを思い出そうとしたわけじゃないの)
誰に聞かせるでもない言い訳を内心で吐露しながら、
顔を手で扇ぐ。
一向に治まることのない熱に焦りを覚え始めた頃、
茶色い箱を胸に抱えた従業員が戻ってきた。
「お待たせいたしました!」
(え、もう持ってきちゃったの?)
きっとまだ頬が赤く染まっているだろう。
このまま涼介のところへ行ってしまえば
変な勘繰りをされてしまうかもしれない。
しかし、なかなか取ろうとしないこちらに
従業員が笑みを貼りつけたまま首を傾げる。
頼んだ手前拒否することもできない。
みのりは差し出してきた救急箱へ渋々手を伸ばした。
「あ、ありがとうございます」
仕方ない。頼んだのは自分だ。
みのりは救急箱を抱き締め、涼介のもとへ進む。
何か言われたら気のせいだと言い切ってしまおう。
青年のことだ。深く追求してくることはないだろう。
(うん、そうだわ。そうすればいいんだわ)
とっさに思いついた割には妙案だ。
ホッとしたら頬の熱も下がった気がする。
幾分楽になった気持ちで歩いているその後ろで、
碧が従業員へ話しかけていた。
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