Gold Plum





第三章


救出


〜涼介&みのりの場合〜




IIC




(違うの、あんなことを思い出そうとしたわけじゃないの)


 誰に聞かせるでもない言い訳を内心で吐露しながら、

顔を手で扇ぐ。

一向に治まることのない熱に焦りを覚え始めた頃、

茶色い箱を胸に抱えた従業員が戻ってきた。


「お待たせいたしました!」

(え、もう持ってきちゃったの?)


 きっとまだ頬が赤く染まっているだろう。

このまま涼介のところへ行ってしまえば

変な勘繰りをされてしまうかもしれない。

しかし、なかなか取ろうとしないこちらに

従業員が笑みを貼りつけたまま首を傾げる。

頼んだ手前拒否することもできない。

みのりは差し出してきた救急箱へ渋々手を伸ばした。


「あ、ありがとうございます」


 仕方ない。頼んだのは自分だ。

みのりは救急箱を抱き締め、涼介のもとへ進む。

何か言われたら気のせいだと言い切ってしまおう。

青年のことだ。深く追求してくることはないだろう。


(うん、そうだわ。そうすればいいんだわ)


 とっさに思いついた割には妙案だ。

ホッとしたら頬の熱も下がった気がする。

幾分楽になった気持ちで歩いているその後ろで、

碧が従業員へ話しかけていた。










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