Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


七


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（もしかしてこちらが去るまで頭を下げているつもりなのかしら？）


　なんで融通の利かない男なのだろう。

美都子は直角に腰を曲げたまま微動だにしない青年に微かな

苛立ちを覚えながら運転手の名を呼んだ。


「梅田さん」

「かしこまりました」


　それだけでこちらの意をきちんと汲みとってくれたのだろう。

梅田がミラー越しに吊り上った瞳で目礼する。

そして熊のように大きな体のくせに音も立てず車を降りた。

窓を閉め始める途中で涼介へ話しかける梅田の低い声が聞こえてくる。


「梅畑涼介君だね。美都子様が少し君と話をしたいそうだ。

一緒に来てくれるね？」


　美都子は窓を閉め切ることはせず、耳をそばだてた。


「は、はい。承知しました。……太一君、野木崎さん、

申し訳ないんだけど、ちょっとここで待っててくれるかな？」

「え、ええ。わかったわ」

「お願いします」


　眉を下げる涼介に野木崎律子という女性が引き攣った笑みを

浮かべている。それに対し、吉田太一という少年のほうは

両手を振って満面の笑みで涼介を送り出した。


「うん。お兄ちゃん、いってらっしゃい」


　天真爛漫な少年の表情に背中を押されるように涼介が

梅田のあとをついてくる。美都子は青年の姿を一瞥したあと、

少し開けていた窓を完全に締め切った。