Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





I@




「もう、行かないって言ってるでしょう!」

「逃げるなって言ってるだろう! わがままも大概にしろ!」


 涼介の言葉はいちいち図星を突いてくる。だからこそ癪に障るのだ。


「わがままですって! あんたに私の何がわかるっていうのよ!」

「わかるさ! 一番本当の気持ちをぶつけなくちゃいけない

人間から逃げて、そんなんで黄金梅なんか実らせられると思うのか?

甘えるな!」

「甘えてなんかないわよ!」


 自分だってわかっている。涼介の言っていることは正しい。

もし自分が彼の立場だったら、やはり同じようなことを言っていた

だろう。それでも自分と母との関係は違うのだ。みのりはきつく手を

握り締めた。そして、息を深く吐き出したあとじっと涼介を見つめた。


「何を言ったって聞いてもらえないから、

だから黄金梅を実らせようとしてるんじゃない。それを逃げてる?

私のことをわかろうともしないで決めつけないで」

「次期当主? 婚約? そんなもの、全部捨ててしまえばいいんだ!

この際だ、俺も全部捨ててやる!」

「そうよ。捨てるのよ。だから黄金梅を実らせようとしてるんじゃ

ない!」


 先ほどとは反対の意見を言い出す涼介に、今度は同意する。

しかし、それが彼には気に入らなかったみたいだ。


「黄金梅を実らせることと母親の問題を一緒にするな!

もっと正面からぶつかれよ! あんたの思い通りにはならないって

宣言してやれ! 君は君だろう!」


 なぜわかってくれないのだろう。

これだけ言ったのに何も伝わっていない。みのりは、今までのことが

すべて徒労だったと気づき空しくなった。もう面倒くさい。

すべてをぶちまけてしまおう。涼介の前では、どうせ猫を被ることも

できないのだからちょうどいい。


「あの人には黄金梅がすべてなのよ! 黄金梅がある限りあの人は、

お母様は私のことなんて見てくれないわ!」










一つ前を読む   GPの部屋に戻る   次を読む