Gold Plum
第六章
対峙
〜みのり&涼介の場合〜
三
DIB
「天下……。確かに天下ではありますが。
ああ見えて愛妻家なんですよ」
「愛妻家……」
雅仲の発言にみのりは目を見開く。
まさかあの市長をそのような単語で表現するとは思ってもいなかった。
(でも言われてみると納得できる気がするわ)
さっきだって市長の奥方が出てこなければ、話は膠着したまま
だっただろう。
(碧が奥さまのことを言っただけでさらに険悪になってものね……
愛妻家か……いいなー)
自分も夫になる相手にはそうなってもらいたい。そんなことを
考えていると、脳裏に涼介の顔が浮かんだ。
(いや、ダメよ。涼介は紅の彼なんだから! わ、私の旦那様には
ならないし、愛妻家なんて、そんな何を考えているのよ私ったら!)
頬が熱くなる。みのりは、愉快気に話す碧たちの会話を耳に入れ
ながらが、赤くなっているであろう顔を隠すため茶を飲んだ。
「夫人とお付き合いするまでは恋愛などバカな人間がするものだ!
というタイプの人間だった気がしますが、変われば変わりますね」
「そんなこと言ってましたか? あはは、兄さんらしいですね。
めちゃくちゃカッコつけなもんだから」
声をあげて笑う雅仲の言葉に、碧がしみじみと答えた。
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