Gold Plum

第六章


対峙


〜律子＆麻里の場合〜


二


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「もうそろそろかしらね？」


　野木崎律子は居間にかかっている壁時計を眺め、呟く。

あと１５分ほどで小越麻里がやってくる時間だ。

手持無沙汰手で拭いていた台布巾を台所へ持って行き、ゆすぎ始めた。


「それにしても山波さんがみのり様を裏切るとわねー」


　律子は昨日起きた山波の逃走劇を脳裏に浮かべる。


（最後なんて太一君からも責められちゃったものね……

あれじゃあ逃げたくなるのも無理ないわよね）


　自分が同じ立場でそうしていたに違いない。

だが実際は、あと少しで願いが叶うかもと期待してしまった反動で、

大人げない態度を取ってしまった。

律子は台布巾を絞りながら苦笑する。


（梅畑君とみのり様はきちんと説得できたかしら？）


　あのあと太一と麻里の三人で一足先にタクシーに乗り込んで

しまったことに多少の罪悪感を抱きながら、律子は椅子に座り

スマートフォンを操作した。


（まだ何の連絡もないか）


　あの頑固一徹をそのまま体現しているかのような山波が、

簡単に懐柔されるはずもない。律子が心の中で涼介たちへエールを

送っていると、来客を告げるチャイムが室内に響いた。