まどろみの向こう側IA


「……これは?」

 伸べた掌に収められた物を見て、女性が首をかしげる。

『ジョーイ』は彼女の問いには答えず、

受け取ってくれとの意を込め再度腕を突きだした。

正直、何をどう言えばいいのか、まったくわからなかったのである。

「……くれるの? 私に?」

 女性の問いかけに、『ジョーイ』は頷いた。

女性が困惑したように眉を寄せ軽く頭を振る。

目の前で俯いていると、正面へゆっくりとしゃがみ込み、

手にした物をまじまじと眺めてくる。

やがて何を思ったのか、

にこりと口の端に悪戯っぽい笑みを浮かべてきた。

 ね、と彼女は口を開いた。

「今時間ある? 私、今ちょうど話し相手が欲しいところだったのよね」

 言うが早いか彼女がこちらの意志を無視して手を掴み、

塔の階段へと引っ張ってくる。

そのまま「座れ」の意を指で示してくるので、

『ジョーイ』は戸惑いつつもおとなしく腰をおろした。

 女性は満足げにこちらを見やり、隣りへと腰掛けてくる。

それから一呼吸置いて、改めて言葉を紡いできた。

「自己紹介がまだだったわよね。私の名はエマ。よろしくね」

 今一度手を差しだされ、『ジョーイ』は困惑する。

「あ……」

 躊躇いながらも手をとった。

『ジョーイ』自分もも名乗ろうとして、ぐっと声を詰まらせる。

エマはそんなこちらの手をぐいとつかんで荒々しく上下させ、

榛色の瞳をくるくると輝かせ尋ねてきた。











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