ユキうさぎの遠足
第一章
一
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「いい天気だな」
峰岸(みねぎし)ユキは額に手をあて、
雲ひとつない空を見上げた。
久しぶりの太陽に自然と顔がほころぶ。
梅雨だから仕方のないことだが、
やはり出かけるときは晴れているほうが気分がいい。
それがたとえ、自分の意思で出かけるものではないとしても。
(でも、雨だったら家でのんびりできていたかもしれないのか)
そう考えると、軽やかだった足取りが少しだけ重たくなった。
(俺って振り回されるタイプだったのかな)
ユキは、これから向かう先で待っているであろう少女、
宮野辺(みやのべ)うさぎとの出会いを思い出していた。
2つ下の彼女と出会ったのは、大学受験真っ只中の4ヶ月前。
私大の不合格を知ったあの日、
世界に名だたる宮野辺財閥の一人娘である彼女から
告白をされたのが始まりだった。
あれが告白と呼べるものなのかどうか今でも疑問に思っている。
(やっぱり、ユキうさぎになりたいから旦那になれってのは、
どう考えてもふざけてるとしか思えないよな)
しかも、母親である峰岸サクラが家政婦をしている雇用主の
娘だという。それを知ったときは母親もグルになって
自分をからかっていたのかと思い、激怒した。
(まぁ、それは誤解だったんだけどさ)
それでもやはりお嬢様の暇つぶしか何かだと疑っている
自分がいる。
でも最近は、それだけではないようにも思えてきたから、
正直戸惑ってもいた。
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