ユキうさぎの遠足
第一章
一
B
彼女にそのことを持ちかけられたのは、
新らしい学年にも慣れ始め、
中間テストの範囲と日程が発表された頃だった。
「今度のテストで良い点数が取れたらデートしてください」
うさぎの断られるとは思っていないような口振りと、
彼女と母親に振り回され続けている現状に
これではまずいのではないかと思い始めていたユキは
初めて首を横に振った。
そもそも良い点しか取ったことのない彼女にそんなことを
言われても、出来レースにしか思えない。
それをうさぎに指摘してみたが、彼女は諦めなかった。
「ではユキ先輩の思う良い点を教えてください。
それ以上の点が取れたら私の勝ちということで、
ご褒美にデートしてください」
うさぎが、大きな瞳をキラキラさせて顔を近づけてきた。
髪の毛の匂いだろうか。甘いココナッツの香りと、
真っ直ぐこちらを見続ける彼女の視線に、顔が熱くなる。
ユキは早くこの距離から逃れたくて、
何も考えずに合格点と了承の意を口にした。
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