第37回定例研究会速報 (2000.3.18)


 3月18日(土)、全日本海員組合の山下昭治氏を報告者に迎え、「全日本海員組合の国際活動 〜 FOC(便宜置籍船)キャンペインを中心に 〜 」というテーマで研究会を開催した。

 全日本海員組合は企業内組合が一般的な日本において産業別組合の組織形態をとるユニークな存在であり、その活動もユニークである。また国際活動では国際産別組織ITF(国際運輸労連)とのつながりが深いのが特徴であり、報告の主テーマであるFOCキャンペインもITFと深く関わってすすめている活動であった。

 報告によれば、FOC問題は次のように要約される。伝統的な海運国においては、海運関係法規が整備され、適切な税制のもとに税金が徴収され、また船員の労働条件の最低水準を労働保護法で定め、かつ団体交渉を通じて締結された労働協約によって労働条件の向上をはかり、安全基準を法律で定めて航行の安全性が確保されてきた。しかしFOC国は本来海運産業を必要としないためこのような法制等がほとんど整備されていない。かりにあったとしてもその実効性を確保するための機関や意思や力はもたない。FOC問題は、船主が、自国の海運諸法制を回避するために船籍を自国からFOC国に移し、そのことが自国船員の雇用喪失、FOC船の労働条件の低下、海難事故の続発などさまざまな深刻な問題を引き起こしていることにある。

 こうした事態に対し、ITFは、FOC制度の廃止を目標に掲げ、当面の目的としてFOC船にITFの承認する労働協約を締結させる活動に取り組んでいる。具体的な取り組みには、ITF労働協約で定めた最低基準の適用を拒否する船主に対する荷役ボイコット行動、ITFインスペクターによる入港するFOC船の査察活動、悪質船の摘発などがある。これらの取り組みには、港湾労働者との連帯が欠かせない、とのことだ。なお、報告者の山下氏は、インスペクター兼インスペクターをとりまとめるコーディネーターのひとり。コーディネーターが配置されているのは世界で14,5カ国であり、その数は世界で14,5人という重要なポストにいる。

 報告の後の議論では、海運業が地球上で最初にグローバライズされた産業であり、ITF、海員組合が戦後早い時期からグローバル化に対処してきていたことについて、さまざまな角度から質問が寄せられた。


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