第38回定例研究会速報 (2000.4.8)

テーマ:リフレクティブ・プロダクション(ウデヴァラ生産方式)と技能の学習方法
〜 工場労働再編成の新たな選択肢 〜

報告者:レナルト・ニルソン



 科学的管理方法からフォード的流れ作業方式、さらには「リーン生産方式」にいたる従来の生産・作業方式に対して、流れ作業方式自体に代わる新しい生産・作業方式の開発をめざす試みがスウェーデンのボルボ社で行われてきた。その一つ、ウデヴァラ工場で、1985年からウデヴァラ生産方式とよばれる生産・作業方式の開発に企業内教育の助言者として深くかかわってきたレナルト・ニルソン氏に「リフレクティブ・プロダクション(ウデヴァラ生産方式)と技能の学習方法---工場労働再編成の新たな選択肢」というテーマでご報告いただいた。

 報告によれば、ウデヴァラ生産方式が最終的にめざしたものは、生産効率と人間的労働の両立とのこと。具体的には、サイクルタイムを拡大し、人間的側面に対応するような労働内容の再編成が図られた。流れ作業をやめ、その代わりに作業対象となる車のボディを定置し、そこに小人数の労働者がチームをつくって仕事をし、車を組み立てる、いわばクラフトマンのやり方に行き着いた。車1台を組み立てるのに必要な時間(約2時間)がそこでのサイクルタイムとなった。サイクルタイムが長いために、そこで仕事をする労働者には作業のさまざまな段階・局面で次々に起こってくる諸問題に答える能力が求められ、そのための学習方法が開発されてきた。それは労働者の自己決定を可能にする学習方法だったという。同時に、それを可能にする技術戦略や作業、部品編成も開発されてきた。結果として、短いサイクルタイムの流れ作業方式に比べ、生産効率の点からもムダがはぶけ、より人間的労働に近づけた、と結論する。氏によれば、流れ作業方式が効率が良いというのは先入観にすぎないという。

 ウデヴァラ生産方式の開発には、労働組合よりもむしろ経営側のイニシアティブが強かったという。経営側が自社製品に「環境や人間的労働に配慮した企業の車である」というバリューを付加することを経営戦略として重視したことのあらわれだったという。さて、この選択を世界の企業あるいは消費者はどう受け止めたのであろうか?


「過去の研究会一覧」に戻る
HOME