第40回定例研究会速報 (2000.6.3)

テーマ:労働運動再生の試み--日英の国際比較
報告者:ジョン・サルモン(カーディフ大学)




 6月3日午後1時半から5時半まで、「労働運動再生の試み--日英の国際比較」というテーマでの研究会が行われた。主報告者、カーディフ大学のジョン・サルモン氏は、「ニュー・ユニオニズム」プロジェクトの一環として、組織率の急落に対処すべく1998年にTUCが発足させた「組織化アカデミー」の実態について、詳細な報告をした。

 TGWUやGMBなどの大組合は自前でのオルグ養成を追求しているが,中小の16組合などが「組織化アカデミー」に関与しており、「アカデミー」の訓練生たちは、既存の組合員へのサービスに力点をおく従来型のオルグから、未組織労働者の組織化に力点をおく新しいタイプのオルグとして養成され、かなり有望な成果をあげている、というのが報告の要旨であった。

 とくに注目されたのは、厳選された訓練生たちのバックグラウンドで、第1期の訓練生54名は、9割近くが組合員であるが、63%が30歳未満、5%が女性であり、労働・社会主義運動や学生運動の経験がある者もほぼ半数に及んでいる、ということであり、この新しいオルグ達が主に行っている活動は、賃金労働条件の交渉や苦情処理などよりは、狙いを定めた職場での活動家の獲得や、組織化キャンペーンの企画・推進など,アグレッシブなものである、ということであった。

 一緒に出席したデイブ・シンプソン氏を含めて、現在、カーディフ大学の労働問題研究グループは、このTUCの組織化プロジェクトをモニターしているので、得がたい情報が提供された。また、東京大学の田端博邦氏は、サルモン氏と協力して行った連合傘下の産別組織担当者へのアンケート調査の結果を報告した。予想どおり、日本の民間分野の大多数の産別では、ユニオン・ショップとチェック・オフが組織化を保障している構造が確認されたが、同時に組織化の障害として使用者の反対をあげた産別が半数に及んでいること、パートや派遣労働者の組織化を課題として意識している産別もあること、などが「意外な」事実として報告された。

 討論では、連合の高橋組織局長が、過去5年間に90万人近くの組合員が減少しており、ナショナルセンターが産別と協力して組織化キャンペーンに取り組んでいること、組織化の相談に近く地方連合が対応できる態勢を整えていること、ただし、配置されている約80名の担当オルグは退職した組合役員(OB)であること、などを説明した。イギリスでパート労働者の2割以上が組織化できている事情、組織化キャンペーンの具体的な進め方、そのさまざまな事例、日英の差異など、きわめて活発な討論が行われた。


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