第41回定例研究会速報

(2000.7.15)



 7月15日午後1時半〜5時半まで、「日本の民間大企業の世界戦略と生産システムの変化 〜自動車産業の事例〜」というテーマで研究会が行われた。主報告は、名古屋市立大学の藤田栄史さん、コメントは日産村山工場の組合員の方2名。参加者12名。

 最初に、藤田氏が、今日自動車産業で進行している国際的な再編の動きとその背景について概観したうえで、これにどのように対応しているかという観点から、日本の自動車メーカーを例に、90年代以降の世界戦略と生産システムの変化について、詳細な報告をした。つぎに、日産村山工場の組合員お二人から、リバイバル・プランとのたたかいの近況が報告され、質疑に入った。内容が多岐にわたったが、特に印象深かった点について紹介する。

1)自動車産業における国際的な再編は、グローバル化にともなって激化する国際競争や市場の変化、環境、安全問題への対応によるところが大きい。とりわけ電気自動車やハイブリッド・カーに代表されるような環境対応型自動車の開発は、開発技術や開発コストの面でも一社だけで対応するのが困難なだけでなく、従来の自動車という製品を根本的にかえてしまう可能性があるだけに今後の企業再編の行方は予断を許さない。

2)日本の自動車メーカーの90年代以降の世界戦略には、大きく二つの方向がみられる。一つは、トヨタ・ホンダのように、他との柔軟な業務・技術提携によって国際的な再編に対応しようというもの、もう一つは、日産に代表されるような、外国メーカーとの資本提携により傘下のなかでの生き残りを模索しようとする途である。これら世界戦略のもと各社で開発体制・生産体制・製品戦略が再構築されているが、共通するのは柔軟性と低コストの追求である。また、90年代の変化で大きいのは開発体制の変化で、いまやバーチャル工場で試作が行われる段階とのこと。

3)80年代に「リーン生産方式」ともてはやされた日本の生産方式の変化として注目されるのは、女性や中高年者でも働けるライン作り、しかも柔軟性に富んだ低コストのライン、自動化が追求されつつも、組み立ての「完結工程」化がめざされ、グループ内ではあるが労働者が自分がいま行っている労働の意味や目標を明確にできたり、グループで仕事をしていることが実感できたりと、グループの自律的管理を可能にするようなライン構造になってきている、ということである。この変化をどのように捉えるかは、「リーン生産方式」の収斂か分散かという論点と絡んで、討論で時間をさいた論点のひとつであった。

4)日産村山工場のお二人が所属するのは、99.9%を連合日産労組が組織するところ、約40名で組織される少数派組合(JMIU)である。99年12月に最終確認された特別移動条件が発表されて以降日産労組の運動は盛り上がりを欠くが、JMIUは工場閉鎖が本当に最良の選択なのかを争点に闘いを続けている。その最大の理由は、工場閉鎖になれば労働者には単身赴任しか選択肢がない、そのような働き方をさせることに正当性はあるのか、ということであった。

(感想)藤田氏の報告は、日ごろの濃い調査密度が窺えるものであった。日産の方々のお話は、普段の報道では得られない内容であるだけに大変興味深かったが、実際苦境に立たされているとの印象を受けた。また、口にはしないが、「リーン生産方式」や「労働の人間化」の議論が、労働の現場にいる者にとっては単なる話題のひとつとして済まされない現実であることを肌で感じた。


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