時−forever for ever−

(1) 代表作

 この曲は、アルバム「時」に収録されたオリジナル曲で、後1年、歌手としての活動期間を与えられたなら、本田美奈子.の代表作として世に知られていたはずの曲です。私が、本田美奈子.さんの歌で最も好きな曲です。


(2) 美奈子ソプラノまたは美奈子ポップス


 この曲、カラオケに入ったとしても、歌いこなせる人、少ないと思います。この歌がどれだけ難曲かは、理屈抜きに歌ってみれば分かります。後半の高音部は、最高音B(シ)ですが、A音前後の音を声量を伴って出し続けないといけません。裏声なら出る人もいるでしょうが、弱くしか出せない場合が多いも思います。かといって、キーを下げてしまうと、最初の方の部分の音域が低くなり過ぎて、歌として聴かせられないものになってしまいます。

 「時−forever for ever−」は、前半の中音域で聴かせる部分と、後半の高音で聴かせる部分が結合したような構成になっています。

 イントロに続く出だしからの部分は、音域や譜割り的には、難しくないので誰でも歌えそうなのですが、本田美奈子.さんのように、一音一音きれいに響かせながら、美しく、情感を込めて歌うのは難しいです。このあたりは、自然な声で聴かせるバラードの歌い方でしょう。私は、後半の高音部よりもさることながら、ここの中音域の部分がとても気に入っています。

 「勇気を出して」からの高音部は、美奈子ソプラノの醍醐味というところでしょうか。音域的には、クラシックのソプラノ歌手なら出ると思いますが、クラシックの歌い方で歌ってしまうと、出だしの中音域の部分が不自然になってしまいます。

 前半と後半をきれいにつないで一つの歌として歌える人、世の中にあまりいるとは思えません。美奈子ソプラノが独自の世界を切り開きつつあったといえるでしょう。

 美奈子さんは、「時」が発売されてからも、コンサートで歌える仕上がりになるまで、なかなか納得できなかったようです。実際に人前で歌ったのは、CDショップの2回のイベントだけでした。2回目の披露では、CDでは高音のところ少し、狂いがあるかなと思える部分も見事に直って、きれいに聴かせてくれました。病気の発症が後1年ずれていれば、コンサートで、素晴らしい「時−forever for ever−」を堪能することができたでしょう。また、テレビでも見ることができたでしょう。ミュージックステーションとかいった番組で、この歌歌ったら、皆驚くだろうなと、内心楽しみにしていました。

 せっかく、低音から超高音までがきれいにつながりはじめ、美奈子ソプラノないし美奈子ポップスが音楽のジャンルとして確立されようとしていた時に、病気になってしまい、本当に残念でした。