彼の唇が首筋に下がって行く。掌がやんわりと、乳房を包み込む。柔らかく、乳房が揉まれる。

Tシャツがめくり上げられ、ブラの谷間に唇が触れる。舌が乳房をなぞる。

 私も、彼の着ているシャツのボタンに手をかけたが、指が震えて上手く外すことができない。彼は

自分でさっさとボタンを外すと、上半身裸になった。

 間接照明に浮かぶ彼の上半身は、思っていたより筋肉質で、たくましくて、大きかった。

 私も自分のめくりあげられていたTシャツを脱ぎ捨てると、彼が覆い被さってきた。

 始めて触れる彼の素肌は、すべすべとなめらかで、弾力があって、少し汗ばみ、ひんやりしていた。

密着している胸や腹から、融けて一つになってしまいそうな、心地よい感触。

 脚に当たっている彼のペニスはすでに固くなっていて、そっとジーンズの上から撫でた。

「ああ…」彼が私の耳元で溜息を漏らした。

 その溜息に、気が遠くなる。

 私の背中をまさぐっていた手が、器用にブラジャーのボタンを外した。早速、乳首に唇が

つけられる。

 軽く吸いながら、乳首が転がされ、みるみる乳首が固く立ち上がっていくのが自覚出来た。

 くうん、と甘えたような吐息が、鼻から漏れるのが押さえられない。

 彼の手が、ジーパンのボタンにかけられた。外されたボタンと、下ろされたファスナーの隙間から、

手が、そのまま股間に潜り込んで行く。ショーツの上からでも、濡れているのが解ってしまうだろう。

布越しに的確に割れ目をなぞられて、私の体はぴくっと震えた。

 彼が私のジーパンを下ろそうとしたので、少し腰を上げて脱がせ安くする。ジーパンはあっさりと

脱げた。

 熱い手が、ショーツの上から大きく股間を包み、揺すぶる。じわっと性器が熱くなり、濡れるのが

自覚できた。そのまま長い指がショーツの中に這い込んだ。くちゅっと、湿った音がした。ショーツを

脱がせながら、彼の指は敏感な部分を的確に捉え、やんわりと刺激し続ける。

 と、乳首を弄んでいた彼の唇が下がっていった。

「あ…やだ…そんなことしなくていいよ…」

 私は手を伸ばしたが、その手は払いのけられ、彼は私の股間に口を着けた。

「あ…」私は羞恥に両手で顔を覆った。

 ここまではそれでも我慢していたのだ。だけど、もう、だめ。体が言うことを聞かない。みるみる

快楽に飲み込まれていく。

 指で割れ目が広げられ、舌先が敏感な突起を捕らえた。ちろちろと、触れるか触れないかの絶妙な

強さで、舐め回される。

「あ…そんな…」

 がくん、と上半身が跳ねる。強烈な快感が背中を這い上ってくる。

 指が中にぬるっと差し込まれ、軽くかき混ぜられる。くちょくちょと、卑猥な音が部屋に響く。

「あ…だめ…やめて…」かすれて甘えたような声しか出ない。

 ぴくぴくと、自分では制御できない痙攣が、全身に小さくおこる。

 彼が敏感な突起を強く吸い上げて、大きな悲鳴を上げそうになったので、指を噛んで堪えた。だって、

窓が開いている。

 どうして、こんなに感じてしまうの。このままじゃ…もう…いってしまう!

 と、突然愛撫が止んで、彼は私と並んで横たわり、唇を合わせた。自分の味がした。

「…本当に、いい?」

 彼が私を見下ろしながら真剣な顔で訊いた。

 私は小さく頷いた。

 彼はほっとしたように微笑むと、ベッドのマットレスの下を探り、私に背を向けて、ジーパンを脱いだ。

 ああ、着けてくれてるんだ。

 ベッドの隅でごそごそと作業している彼の背中を見て、とても幸せな気分になる。

 当たり前のことなんだけど、その当たり前の優しさが嬉しい。

 …高校生の彼が何も言わなくても用意してくれているのに、あの男は…。

 要らぬ記憶が蘇りそうになり、慌てて起き上がって頭を勢い良く振る。

 目を開けると彼の心配そうな顔が間近にあって。

「どうしたの?」

「あ…ううん、なんでもない。感じ過ぎちゃった」

 そう言うと、彼はくすっと笑って、私をやんわりとベッドに押し倒した。

 堅いものが、すぐに私の中に入ってきた。

 何せ1年半ぶりくらいなので挿入には多少の痛みは伴ったが、これ以上ないほど濡れていたし、彼は

あくまでゆっくりと丁寧に入ってくれたので、奥まですっぽり入る頃には、痛みなど気にならない程の

充実感に満たされていた。それだけで、涙が出てきそうなほど。これを、この人を待っていたのだと

思えるほどに。

 彼はゆるゆると中をかき回すように動き始めた。

「ああ…」

 思わず溜息が漏れる。

「気持ちいい?」

 彼が耳元で囁く。

「うん…すごく…」

「俺も…すごく気持ちいい。曽根さんの中、熱い」

 彼の動きが小刻みな前後運動に変わる。密着した胸が汗ばんでくる。

「あ…あ…うん…」

 喉の奥から漏れるあえぎが押さえられない。それでも窓が開いていることを思い出し、必死で

こらえてはいるんだけど。

 下腹の方からじんわりと熱くなってくる。彼が動くたび、快感の波が積み重なっていく感じ。

「感じてるみたいだね」

 彼の囁きも息が荒い。

「うん…すごく…なんか…私ヘン…」

「ヘンじゃないよ、すごく綺麗だよ。もっと感じていいんだよ」

 彼が身を起こし、動きが強く早くなった。

「んっ!」

 全身をやんわり包んでいた快感が、一気に痛いほどに強くなった。

 きゅうっと性器が収縮していくのが解る。

「すご…締まるね…」

「ああ…早乙女くん…私…」

 涙がこぼれる。

「痛いの?いいの?」

「いいの…こんなのって…ああ…」

 びくびくっと、大きく全身が震える。

「いきそう?」

「…いきそう…」

 一段と彼の動きが激しくなった。

「あうっ!」

 全身が硬直してくる。自分では制御できない。

「…ああ、いっちゃうよぉ」

「いいよ、いっていいんだよ」

「やだ、ああ、お願い…一緒に…一緒にいって!」

「いくから、俺ももう」

 私はオーガズムを波で感じる。小さな波が何度かやってきた後、大きな波が私をすくい上げ、押し流す。

 瞼の裏が真っ赤になって、火花が散った。

 どうして、こんなに、どうして、始めてなのに感じるの?

「ああっ!」

 全身が反り返り、見たこともない大波に私はさらわれた。

 私はこれまで、挿入の行為自体でいったことは無かったのだ。挿入しながらクリトリスを弄って

貰わないと、いけなかったはず…なのに。

 数秒後、震えている私の上に、彼も動きを止め、倒れ込んだ。

 強い力で抱きしめられる。

 大きな胸にすっぽりと包み込まれる。

 涙が止まらなかった。

―――これが私の初体験ならどんなに良かっただろう…。



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樹下の天使3−1A