寒鯉

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俳句


寒鯉の 動けば揺れし 塔の影

津和野路や 見事に太る 寒の鯉

鳥よけの 糸真直ぐや 寒の鯉

詩仙堂 模したる庭に 寒の鯉

寒鯉や かすかに聞こゆ ししおどし

 

寒鯉の 群れて孤独を 深めけり

寂しさに 群れて寂しき 寒の鯉

金色の 寒鯉王の 如くなり

舵取れば 丸き波紋や 寒の鯉

面舵の 尾鰭一振り 寒の鯉
 

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話

 
 1月31日(土)の栄句会の季語は<寒鯉>でした。
歳時記によると寒鯉は、
 「寒中の鯉は動作が鈍くなり、池沼の底にじっと動かず、
たまたま暖かい日にわずかに水面に出るくらいである。
しかし一年中で最も美味である」とあります。

 昨年の12/23から二泊三日で行ったバスツワーでも、
観光地で寒鯉を見たので、その記憶を手繰り寄せて句を作りました。

 一つは山口県の瑠璃光寺です。
長州は室町時代にこの土地に勢力を持っていた大内氏が、
人一倍都に憧れ、なにかと京の雅を取り入れ、
文化の香りの高い街を作りました。
その文化の極みともいえるのがこの瑠璃光寺です。

 その寺にある五重塔がすばらしく、
まさに絵に描いたような美しさで、完璧な調和を保った建物です。
五重塔は数あれど檜皮葺きは珍しく、
その荘厳さは京や奈良に負けない塔です。
その影が、寒鯉のいる池に映る姿が印象的でした。

 長州に誇る塔あり寒の鯉
 寒鯉の動けば揺れる塔の影

 もう一つは津和野の寒鯉です。
山陰の小京都と言われる津和野(島根県)には掘割りが巡らされ
そこに鯉が飼われています。
それは、かつての城主であった坂崎出羽守
(千姫を大阪城から救ったことで有名な)
が飢饉用に鯉を飼うことを奨励したことが始まりだそうです。
今では、多くの観光客が訪れ、その餌で、
これほど鯉も太ることができるのか?と驚くほどに太っています。
まさに極限のデブ鯉ですね(*^_^*)。
そのため今では、観光客の餌には興味を示しません。

 津和野路や見事に太る寒の鯉
 こびうらぬ津和野に住みし寒の鯉

 これだけでは、満足のいく句が10句できなので
なんとかもう一度寒鯉を見たいと思って、
金曜日が名古屋に出張だったので、少し早く出て、
鶴舞公園で寒鯉を見てきました。
 
 駅から一番遠い竜ヶ池には一杯鯉がいました。
寒鯉は動かないでジッとしているイメージでしたが、
水が温くかったのか、群れて目一杯動いていました(^_^;)。
30分ばかり、寒鯉を眺めて、
句の素材を探していましたが、
良い歳のオッサンが、朝っぱらから
一人池にたたずんで物思いにふけっている
何事かと、通り過ぎる人は思ったことでしょう(*^_^*)。

 寂しさに群れて寂しき寒の鯉
 面舵は尾鰭一振り寒の鯉
 

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