十六夜

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俳句


評判の 屋台に並ぶ 既望かな

十六夜の 酢蔵は闇を 深めけり

酢の街へ 既望と共に 渡りけり

終電の 潜り抜けたる 既望かな

十六夜の 闇に浮かびぬ 酢蔵かな

 

ごん狐 読みたき夜の 既望かな

十六夜に 抱かれ眠る 野の瓦

酢の倉の うだつ顔出す 既望かな

十六夜や 酢蔵運河に 囁きぬ

信号を 待ちかね探す 既望かな
 

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話

 9月19日(土)の栄句会の季語は<十六夜(いざよい)>でした。

 十六夜とは、陰暦8月16日の夜、またはその夜の月のことです。
今年は仲秋の名月が10月3日だそうですから、
十六夜は10月4日になります。

 月の出が満月(十五夜)よりもやや遅れる(三十数分)ので、
これを「ためらう」、つまり「いさよう」と表現したそうです。

 名月よりは、一抹の淋しさがあり風情があります。
満月のことを、望というので、
(新月、つまり月のない状態を朔といいます)
十六夜は別名(俳句では)、既望(きばう)とも言います。
つまり十六夜は望(満月)を既に過ぎた月というわけです。
私はきぼうという音韻が希望に重なるので、
素敵だと思い句を作りました。
でも、俳句を長くやっている人でも、
既望が十六夜のこととは知らないみたいです。

 そこで一句。

 評判の屋台に並ぶ既望かな
 十六夜の酢蔵は闇を深めけり
 酢の街へ既望と連れて帰りけり

 

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