身に入む

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俳句


清純派 装ふ仮面 身に入みぬ

知らぬ母 妻に聞かされ 身に入みぬ

大病を 越えて身に入む 妻の恩

患ひて 人の温もり 身に入みぬ

憧れし 女優の弧死や 身に入みぬ

 

身代わりの 飼犬老ひて 身に入みぬ

打し娘の 打たれしわけや 身に入みぬ

生き下手な 部下の吾似て 身に入みぬ

善き人の 常と身に入む 運のなさ

吾の名も 忘れし母や 身に入みぬ

 

季語について

 

 

俳句にまつわる話

 10月17日(土)栄句会の季語は<身に入む>でした。
身に入むとは、秋もようやく深まり、
秋冷が身にしむことを言います。
しかし、その背景には「もののあわれ」がありますので、
人の身の上話とか、人の境遇とかが身にしむことも
俳句の題材になります。

*****
 アイドルの酒井法子の覚醒剤にはびっくりしました。
彼女の清純なイメージから、
覚醒剤などの薬物に一番遠い存在だと、
思っていただけにショックでした。

 夫の影響が強かったとは思いますが、
アイドル(清純派)のイメージを
維持して行かなければならないというプレッシャーと苦労は
並大抵のことではなく、
それから逃げるための覚醒剤だったのかもしれません。
(だからといって、許されるものではないのですが……)

 本来の自分と違った仮面を、
スパッと捨てることができると、
気が楽になり、人生も楽しくなるものです。
私もこの年になって、仮面の大部分を捨てることができ、
今は楽になって、人生を楽しんでいます(*^_^*)。
(まだまだ十分ではないですが(^_^;)……)

そこで、一句。

 清純派装ふ仮面身に入みぬ

*****
 母がなくなって5年が経ちました。
光陰矢の如しと言いますが、
過ぎてしまうと、本当に早く感じてしまいます。
ただ、なくなる前の5年間は認知症で、
特に後半の3年間は大変でした。
そのほとんどを家内が世話をしてくれたので、
深く感謝をしています。

 <切干しや命の限り妻の恩>
 これは山口青邨という有名な俳人の名句ですが、
まさにこの俳句の通りですね(*^_^*)。

 介護をする中で、私の知らない母のことを
妻がよく話してくれました。
実の子として50年過ごすより、
5年間母を介護した妻の方が、より深く母を知っている、
それは苦労の多さ、密度濃さを示すもので、
その事実は重いものです。

 そこで一句。

 知らぬ母妻に聞かされ身に入みぬ

 今年もたくさんのスターが亡くなりましたが、
私には大原麗子の孤独死が強く印象に残りました。
ちょっと舌足らずでハスキーな声、
それと似合わない完璧な美人、
私と同じ年代の男性なら、ほとんどの人が憧れの
存在ではなかったでしょうか?

 マスコミからその存在が消えて
難病など、いろいろ大変だったと、死んだ後報道で知りました。

 そんなことを全く知らない私としては、
随分久しぶりにテレビに出て来たと思ったら、
マンションでの孤独死であったわけで、
どうして?という感じが拭えませんでした。

 家族は?友人は?
あれ程の大スターなんだから、
豊かな老後、楽しい老後を送っているはずという
そんな虚構みたいなものも崩れた瞬間でした。

 人の幸せとは?
もちろん、彼女は幸せだったかもしれませんが、
死んで何日も、誰も気がつかないのは、もの凄く寂しいことですね。
やはり、幸せとは、名声、地位、お金で決まるものではない、
そんな気が強くしました(^_^;)。

 そこで一句。

 憧れし女優の弧死や身に入みぬ
 

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